2014 Fiscal Year Research-status Report
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26580143
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
神田 孝治 和歌山大学, 観光学部, 教授 (90382019)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歓待 / 観光 / 人文地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、観光に焦点をあて、歓待について地理学的に考察を行うものである。歓待についての研究はこれまで、(1)神への信仰と歓待の関係、(2)無制限の歓待とその制限の関係、(3)現代社会におけるサービスと歓待の関係、という3つの観点に注目して主として検討が行われてきたが、文化社会的関心に基づく(1)・(2)と、経営的関心に基づく(3)の関係性についての考察がほとんどなされてこなかった。そのため本研究では、現代資本主義社会おける象徴的な歓待現象である観光に注目し、これらの関係性を考察することを目的とする。特に、特定の場所を取り上げて研究することで、歓待の複数の特徴が織りなす複雑な関係性について詳細な検討を行うこととする。こうすることで本研究は、歓待研究を深化させると同時に、文化・政治・経済に注目する人文地理学における議論に貢献することを目指している。 本年度は、歓待・観光関係を中心とする関連文献のレビューを実施すると共に、奄美・沖縄の事例に関する資料・現地調査として、特に与論島の研究を集中的に行った。その成果は、観光学術学会第3回大会(2014年7月6日、於:京都文教大学)と7th East Asian Regional Conference in Alternative Geography(2014年7月25日、於:Osaka City University Medical School)で口頭発表を行い、また論文「観光地と歓待―与論島を事例とした考察」(観光学評論,3(1), 2015, 3-16頁)と、書籍の分担執筆「観光地と場所イメージ―メディアがつくる他所への憧れ―」(遠藤英樹・寺岡伸悟・堀野正人編著『観光メディア論』ナカニシヤ出版, 2014, 43-62頁)でも発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まず既に収集していた資料をベースに分析を行い、与論島を事例として観光地と歓待の関係性について検討を行った。そしてその成果を、「観光地とホスピタリティ―与論島を事例とした考察」と題して観光学術学会第3回大会(2014年7月6日)で、さらに「Recreating traditional culture for hospitality: a case study of “YORON KENPO” on Yoron Island in Japan」と題して7th East Asian Regional Conference in Alternative Geography(2014年7月25日)で口頭発表を行った。また特に場所イメージという観点から、書籍の分担執筆「観光地と場所イメージ―メディアがつくる他所への憧れ―」(遠藤英樹・寺岡伸悟・堀野正人編著『観光メディア論』ナカニシヤ出版, 2014, 43-62頁)としてもその成果を発表した。 そして、夏期の年8月23日から年9月16日まで、与論島及び関連地域での資料及び聞き取り調査を行い、観光地化の過程と歓待との関係性に関する歴史、与論献奉と呼ばれる歓待儀礼の創造、フィルムツーリズムにともなう新しい観光客の歓待のあり方、そして来訪者の歓待への参与についての考察を行った。そうした成果は、「観光地と歓待―与論島を事例とした考察」と題した査読付論文(観光学評論,3(1), 2015, 3-16頁)として発表した。 このように、本年度は初年度にも関わらず当初計画していた以上に成果の発表がなされ、また計画段階では想定していなかった来訪者が歓待に参画する状況を明らかにしてそれを査読付論文として成果を公表した。そのため、本年度における本研究は、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度については、特に与論島に焦点をあてる中で、観光地と歓待の関係性について検討した。こうした中で、観光との関係性を中心に、歓待の多様なあり方が浮き彫りになり、その成果を広く公表することができた。 かかる状況をふまえ本研究では、今後、奄美・沖縄の中でも特に与論島を象徴的な事例として位置づけ、その詳細なあり方についてさらに現地調査を行い掘り下げることにしたい。また、それと関連する奄美・沖縄における事例調査も行い、そことの比較から、与論島における歓待の特徴を浮き彫りにすることにする。こうした検討は、与論島だけでなく、他の奄美・沖縄地域における歓待の特徴も明らかにすることにつながっている。 そのため本研究では、与論島に焦点をあて、奄美・沖縄における調査研究を実施することにする。特に平成27年度については、関連地域で精力的にフィールドワークを実施し、さらなる資料収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度は当初計画においては成果の発表を想定していなかったが、2回の口頭発表や査読付論文発表などの成果発表を実施したため、発表準備・論文等執筆のため、現地調査などの時間が減少したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の余剰額(92,488円)は、与論島などにおける現地調査を推進するため、平成27年度に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)