2015 Fiscal Year Research-status Report
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26580143
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
神田 孝治 和歌山大学, 観光学部, 教授 (90382019)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歓待 / 観光 / 人文地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、観光に焦点をあて、歓待について地理学的に考察を行うものである。歓待についての研究はこれまで、(1)神への信仰と歓待の関係、(2)無制限の歓待とその制限の関係、(3)現代社会におけるサービスと歓待の関係、という3つの観点に注目して主として検討が行われてきたが、文化社会的関心に基づく(1)・(2)と、経営的関心に基づく(3)の関係性についての考察がほとんどなされてこなかった。そのため本研究では、現代資本主義社会おける象徴的な歓待現象である観光に注目し、これらの関係性を考察することを目的とした。 本年度は、前年度に引き続き、歓待・観光関係を中心とする関連文献のレビューを実施すると共に、奄美・沖縄の事例に関するさらなる資料・現地調査を実施し、与論島に加え、沖縄本島における状況を調査した。与論島に関しては、同島の歓待に密接に関係する「たそがれる」という概念に注目し、「与論島への観光と「たそがれる」」(地理 60-6,12-19 頁, 2015)と題する論文を発表した。沖縄に関しては、与論観光のブーム期にも注目され、沖縄観光の重要な観光資源であった死にまつわる場所に注目し、かかる資源を対象とする観光およびその歓待のあり方について検討して、その成果を11月に開催された人文地理学会大会(於:大阪大学)において、「沖縄本島における死にまつわる場所を対象とした観光の社会的生産とその変容 」と題して研究発表を行った。また、本研究に関連する理論部分の一部を、書籍の分担執筆「観光空間を文化論的に理解する」(竹中克行編著『人文地理学への招待』ミネルヴァ書房, 143-159 頁,2015)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、歓待現象としての観光について奄美・沖縄を事例として検討するにあたり、特に与論島に注目して検討してきた。その結果、昨年度は、1本の査読論文(「観光地と歓待―与論島を事例とした考察」観光学評論 3-1, 3-16 頁, 2015)、1本の分担執筆(「観光地と場所イメージ―メディアがつくる他所への憧れ―」(遠藤英樹・寺岡伸悟・堀野正人編著『観光メディア論』ナカニシヤ出版,43-62頁,2014))、そして2件の学会発表( “Recreating traditional culture for hospitality: a case study of “YORON KENPO” on Yoron Island in Japan”(The 7th EARCAG) 、「観光地とホスピタリティ―与論島を事例とした考察」(観光学術学会))という多くの成果を発表した。さらに、本年度には論文「与論島への観光と「たそがれる」」(地理 60-6,12-19 頁, 2015)を発表しており、当初の計画を上回るペースで成果を挙げていると考える。 また本年度からは、沖縄観光における歓待の問題について、特に死にまつわる場所を対象とした観光に注目して検討した。死にまつわる場所を対象とした観光については、沖縄観光において重要な点であるにも関わらず研究が進んでいなかった。加えて、かかる観光のあり方は、与論観光ブーム期においても注目され社会的な議論を巻き起こしたものであり、両地域を歓待の問題に注目しながら比較検討を行うにあたっても、重要な点となっている。そのため、こうした研究を今年度から新たに開始し、その成果を、「沖縄本島における死にまつわる場所を対象とした観光の社会的生産とその変容 」(人文地理学会)と題して報告した。 このように、本研究では、特に与論島に関して当初計画していた以上に成果を発表すると共に、沖縄においては死に注目した新しい観点の研究を行っている。そのため本研究は、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、まず与論島における観光に焦点をあてて検討することで、「たそがれる」といった概念に関わる新しい歓待のあり方など、歓待の多様な状況を浮き彫りにし、その成果を広く公表してきた。また、沖縄における観光についても、死にまつわる場所に注目し、同地における歓待にかかる特徴を明らかにするための考察をすすめ、既にその成果の発表をすすめつつある。 かかる状況をふまえ、本研究の最終年度においては、与論島の調査をさらにすすめてより精緻な情報を得ると同時に、死と関係する場所の観光資源化などに注目しながら沖縄観光における歓待に関する情報を集め、その両者の状況をふまえて観光現象に焦点をあてた歓待についての考察を行うこととする。具体的には、かかる二つの地域に焦点をあて、フィールドワークなどに基づくさらなる資料の収集を行うと共に、最終的な分析・検討を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の調査は順調に実施されたが、僅かながら残額が生じた(1901円)。こうした残額を有効に使うため、次年度の調査に活用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査の推進のために使用する予定である。
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Research Products
(3 results)