2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26590002
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
森川 恭剛 琉球大学, 法文学部, 教授 (20274417)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 差別の責任 / 合理的配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は以下の二点に取り組んだ。第1に、障害学における「合理的配慮」の概念が差別是正の匡正的な意味で理解されていること、これに対し、憲法学では「合理的配慮」は「配慮」の合理的な配分による機会均等であると解されており、「等しさ」の概念が理論的に先取りされていることを論じた。そのため、差別の被害者は配慮要求の権利を行使するために、配慮の義務者と同等の「個」として、最初に立ち現れる必要がある。しかし、これは「合理的配慮」の条件ではなく、むしろ効果であり、したがって法的な「等しさ」は相互行為により実践的に作られる価値であると考えられると論じた(森川恭剛「差別の責任-無らい県運動と障害者差別解消法」無らい県運動研究会編『ハンセン病絶対隔離政策と日本社会』六花出版、2014年、163-84頁)。 第2に、「合理的配慮」の社会的責任について考察するため、児童の虐待死事件に関する刑事裁判の作為義務論を批判的に検討し、いわゆる自己責任論に代わる責任の「社会的つながりモデル」(アイリス・ヤング)の意義を論じた。ここから、例えば胎児の出生前診断は、法的には、個体の「いのち」(出生の機会均等)ではなくいわゆる差別、つまり個体間で互いが人として等しく出会えない、という意味で平等の価値の侵害があるという問題を提起しており、したがって差別的胎児選択の自由を正当化するのは法理論の役割ではないと指摘した(森川恭剛「法の理論の暴力-児童虐待の責任を問うこと」喜納育江・矢野恵美編著『沖縄ジェンダー学2 法・社会・身体の制度』大月書店、2015年、217-45頁)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は「合理的配慮」の概念について障害学と憲法学の観点から検討することを目的としており、その考え方の違いを理解することができたので、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目にあたる2015年度は、平等の法的概念について、「等しさ」をつくる相互行為として、認知科学や動物行動学で用いられる「相利行為」の概念を検討しながら、理論的に追究する。その際、とくに性暴力の行為とその被害者の行為の関係に注目する。一般的には法的能力がないとされる知的な機能障害のある者に対する性行為が、違法であるとされる根拠について、平等の概念を用いて説明を試みたい。
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Causes of Carryover |
旅費の支出額が予定より下回っているのは、体調不良により出席できなかった研究会があったからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究会等に出席するため旅費として使用予定である。
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Research Products
(2 results)