2015 Fiscal Year Research-status Report
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26590002
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
森川 恭剛 琉球大学, 法文学部, 教授 (20274417)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 性行為の相利性 / 障害者の権利 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度に「合理的配慮」の概念について障害学と憲法学の観点から検討し、研究2年目にあたる2015年度は、平等の法的概念について、「等しさ」をつくる相互行為として、認知科学や動物行動学で用いられる「相利行為」の概念を検討しながら、理論的に展開した。具体的には知的な機能障害のある者に対する性暴力とその者と性行為の限界について考察した。 森川恭剛「性犯罪における強制と不同意」刑法雑誌55巻2号、2016年、111-126頁は、第93回日本刑法学会における研究報告に基づき、性行為における相利性の概念の意義を説いたものである。 また2015年7月の九州・沖縄障害学研究会では「障害学における法的な平等」と題し、法学と障害学における差別と平等の捉え方を比較検討した上で、学校教育で「共に学ぶ」ことと「等しさ」の関係、出生前検査で問題になる親と胎児の関係、そして知的障害と性暴力の関係について報告した。 さらに同年11月の日本法哲学会ワークショップで「性暴力の行為と平等」と題して報告し、重度の知的な機能障害のある者に対する性行為を「心神喪失」に乗じて行う性犯罪とする刑法理論は、社会的障壁であり、差別的であると論じた。これに対し、性教育により「等しさ」をつくる性行為を支援することが合理的配慮の措置として必要であり、さもなければ「私たちの自己決定」に基づき性暴力の成否を判断することはできないと論じた。 なお同年12月のジェンダー法学会でも性暴力に関する報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は自由を原理とする法論に対し、平等の法的価値を「等しさ」の人権として、自由の概念に依拠することなく理論的に導き、法理論としてのその有効性を論じることが目標である。昨年度の「合理的配慮」の概念の検討に始まり、研究2年目で相利行為による「等しさ」の概念を性暴力の問題に即して具体的に検討できたので、その理論的有効性を検証する最終年度に向けて準備ができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
「等しさ」をつくるのは相利行為において二元が偶然に邂逅するからであると考えるので、その行為論を哲学的に検討し、行為と価値の関係を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
格安航空券を利用するなど旅費の支払額が少なくなったためと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度を迎えるので研究成果発表のために計画的に使用したい。
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Research Products
(5 results)