2015 Fiscal Year Research-status Report
外国判決と事情変更-わが国におけるその処理方法について-
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26590009
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩本 学 富山大学, 経済学部, 准教授 (70552511)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外国判決 / 事情変更 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,本研究の序論的な検討を行った拙稿「ドイツにおける外国判決変更の訴えについて」(2013年公表)以後のドイツの議論状況及び関連問題の把握をすることに努めた。手法としては,近時公刊されたドイツの家事事件手続法のコメンタール及び関連論文の検討を行った。更に研究計画に記した「外国判決変更の訴えと外国手続法の適用」については,後述するとおり国際私法学会での報告の機会を得たため,本問題に対する最新の状況を把握し,それをまとめる機会を得た。その手法としてはわが国の同問題についての歴史的展開を分析した上で,ドイツ,フランス,英国,米国,スイスなどの関連議論を参照することで,外国手続法の適用についての現状のあるべき姿を示すことに努めた。 本年度の成果報告としては,2014年11月に台湾・銘傳大学で研究報告した「無過失補償制度と事後的請求ー国際私法の観点からー」に加筆修正した,「不法行為訴権廃止条項についての抵触法的考察」(富大経済論集61巻3号(2015)91頁)を公表した。また,個別報告として,国際私法学会において「外国手続法の適用に関する一考察」(2015年6月),国際シンポジウムin富山『国際ビジネスの法的地平を臨む』において「国際的管轄合意と公序法」(2016年1月)と題する報告を行った。前者についてはその加筆修正したものを今後公表予定であり,後者については既にWeb報告書の形で一部が公表済みであるが(http://www.bizlaw.jp/toyama2016_article_07/),今後より詳細な検討を行ったものを公表したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度以来,本研究の一部については3つの成果報告をし,その報告を基礎とした1つの論文及び1つの報告書を公表することができた。残りの1つの報告についても今年度中の公表を予定している。更に,本研究に適切な素材となる裁判例が公表されたことが判明しており,併せて同裁判例の分析も行っている。 なお,研究計画にはなかったことであるが,本年度は,本研究ととりわけ関係の深い「人事訴訟事件及び家事事件の国際裁判管轄法制」について法制審議会で審議が行われ,その成果が取りまとめられた。その議論状況のフォロー及び検討に努めたため,研究計画上は,当初今年度検討予定の「執行判決の法的性質」については来年度に持ち越すこととなった点は課題といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,執行判決制度と事情変更の関係性を明確にするため、執行判決制度自体を理論的見地から分析し,その結果を踏まえて従来の事情変更の議論を批判的に考察することを本年度の出発点とする。その際,この分野の近時出された貴重な裁判例である,東京高判平成27年5月20日及びその原審の分析を行うことで,執行判決と事情変更の新たな枠組みの構築を目指す。同裁判例については,平成28年5月14日に学習院大学で行われる「渉外判例研究会」で報告予定である。 上記裁判例の分析から帰納的に一般論を導き出すことが可能かを検証した後,事情変更の棲み分けの検討を行っていく。その際には,この分野に議論の蓄積のあるドイツの研究を参照する。
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Causes of Carryover |
物品の購入などに適さない程度の額が次年度に繰り越しとなったが,概ね予定通りの執行となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度の物品費に組み込んでいく。
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Research Products
(2 results)