2014 Fiscal Year Research-status Report
医事法学の新たな課題に取り組むための医事法の基本原則を導く研究
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26590014
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
一家 綱邦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50453981)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 医事法 / 生命倫理 / 基本原則 / 再生医療 / 研究規制 / 医療ビジネス / 臨床倫理委員会 / 医療ネグレクト |
Outline of Annual Research Achievements |
【課題(Ⅰ)対応研究=当事者を支援する行為規範として機能する医事法の基本原則の確立】を進めるために有用な事実や情報を収集するための場として、京都府立医科大学附属病院臨床倫理委員会の活動と委員会内の研修会を定期的に開催している。同様に附属病院や関連病院でのインフォームド・コンセントや個人情報保護に関する研修活動の機会を利用して、臨床現場での法的問題の発生状況や臨床現場でのニーズの把握に努めている。 同じく【課題(Ⅰ)対応研究】に取り組むためのアプローチとして、同様の問題関心を抱く保条成宏氏の科研費研究「「関係性の法」としての医事法原理・システムの構築-医療ネグレクト事案を端緒として(基盤研究C、研究課題番号:25380135)」とコラボレーションを進め、研究会の複数回開催や児童相談所への聞取り調査を実施した。その成果を2015年度中に研究論文集として公刊することを計画している。 【課題(Ⅱ)対応研究=多様な形態をとる医療的活動への対応】を進めるために、再生医療を対象にして「医療として提供される再生医療と研究として実施される再生医療との関係」「法規制を受ける再生医療と法規制を受けない自由診療下で実施される医療ビジネスとの関係」について考えた。その成果を、2014年度の日本法医学会近畿地方学術集会、日本生命倫理学会研究大会、日本医事法学会研究大会、日本再生医療学会総会において発表した。同様に研究成果として、研究論文を3本執筆した。また、再生医療学会のリスク・コミュニケーション・ワーキンググループの一員になったり、渡辺千原氏の科研費研究「規範形成・社会的意志決定フォーラムとしての医療・科学訴訟の実証的・比較法的研究(基盤研究B、研究課題番号:25285005)」における海外調査に同行して米国の生命倫理学者と再生医療法制について意見交換をしたり、研究の対象や方法は拡大進展している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【課題(Ⅰ)対応研究=当事者を支援する行為規範として機能する医事法の基本原則の確立】の研究成果を発表する場として、同様の問題関心を抱く保条成宏氏の科研費研究「「関係性の法」としての医事法原理・システムの構築-医療ネグレクト事案を端緒として(基盤研究C、研究課題番号:25380135)」のグループと研究論文集の作成・公刊の計画が順調に進んでいる。申請者自身は「倫理的対応の原則と病院におけるシステム(仮題)」と題する研究論文を現在執筆中である。 【課題(Ⅱ)対応研究=多様な形態をとる医療的活動への対応】の成果として、4つの関係学会で講演発表した(そのうち日本医事法学会では理事会企画のメンバーの1人として大会シンポジウムを企画し、日本再生医療学会の講演は招待講演であった)。さらに研究成果としては、3本の研究論文「再生医療関係3法ー新たな医療を規律する新たな法と倫理ー」「医療に対する法規制のあり方についての一考察―再生医療・自由診療クリニックにおける死亡事故をめぐって―」「再生医療関係3法の概容と医事法学のアプローチ―シンポジウム企画趣旨説明を兼ねて―」を執筆した(前者は公刊済み、後2者は脱稿し公刊待ちの状況)。また、医療と医学研究の関係及び医学研究の規制を考える研究を行った結果の副次的成果として、2016年3月公刊予定の医事法辞典において、医学研究に関係の深い10項目(「FDA」「GCP」「愛知県がんセンター事件」「人体実験」「タスキギー梅毒事件」「二重盲検法」「病院内臨床倫理委員会」「ベルモント・レポート(米国)」「無作為比較臨床試験」「倫理審査委員会」)の執筆を担当することになった(執筆を完了して脱稿済み)。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度においては、【課題(Ⅱ)対応研究=多様な形態をとる医療的活動への対応】に取り組むために、再生医療を1つの対象フィールドに設定して研究を進めた。このことによって、医療と医学研究の関係、医療と医療ビジネスの関係についての検討は進んだと自認している。また、再生医療という新しい医療のあり方を考えることは、今後のわが国の医療のあり方や医療の規制のあり方、ひいては医事法の基本原則を考えるためにも適切な手法であると分析している。さらには、京都大学iPS細胞研究所の上廣倫理部門、再生医療学会リスクコミュニケーション・ワーキンググループ、再生医療有害事象賠償責任保険を開発しようとする企業(保険会社)、申請者も委員の一員となった特定認定再生医療等委員会などとのつながりや連携が始まり、今後新たな研究アプローチの進展を見込むことができる。そして、渡辺千原氏の研究グループの一員としても海外調査に出向き、アメリカの医事法学&生命倫理学研究者(その代表はスタンフォード大学のHenry T. Greely氏)と意見交換をしたところ、海外の研究者もわが国の再生医療及び再生医療関係法制には非常に関心が高いことが分かった。以上の理由から、当面は再生医療を1つの素材にしたアプローチを継続していきたいと考える。 【課題(Ⅰ)対応研究=当事者を支援する行為規範として機能する医事法の基本原則の確立】については、臨床の当事者が抱える問題状況を把握し、支援する対象を拡大する必要性を感じ始めている。具体的には研究対象施設を増やしたり、他に求めることも計画している。 逐次得られた研究成果については、和文英文雑誌に論文等を執筆し、また国内の関係学会等において講演発表することを予定している。
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Causes of Carryover |
全く新規に着手した研究であるために、洋書を中心にして文献を必ずしも網羅的にカバーすることがまだできなかったために、その分だけH26年度の執行額は少なくなった。また、H26年度後半から研究コラボレーションの相手方が増え、H27年度から本格的に協力関係が始まることを見越して、旅費の使用を控えた部分もある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究のコラボレーションの相手方が増えたために、今年度以上に旅費が必要になることが見込まれる。また、再生医療や研究規制については昨今の社会情勢もあり、関連する参考文献の数が予想以上に多くなっている。したがって、これらの研究旅費及び研究図書購入費に充当したいと考えている。
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