2015 Fiscal Year Annual Research Report
新自由主義改革後の中南米における社会紛争─事例の総合的調査研究
Project/Area Number |
26590017
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 勇介 京都大学, 地域研究統合情報センター, 准教授 (70290921)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会紛争 / 国家社会関係 / 政治過程 / 民主主義 / ポスト新自由主義 / ペルー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度だった平成27年度は、全体で三段階に分けて実施した本研究の第二段階と第三段階にあたった。第二段階(平成27年4月~9月)は、第一段階(平成26年度)での調査分析の成果をふまえ、紛争の終結と予防のあり方、ならびにその実施過程について考察した。また、現地調査(補足調査)を実施した。続く第三段階(平成27年10月~平成28年3月)では、事例分析の成果と知見の理論化にむけ、他の中南米諸国との比較をおこなった。 整理を進めた社会紛争データベースを使った分析からは、鉱山開発などの開発が新たに、あるいは急速に進んだ地域で社会紛争が頻発していることが判明した。また、そうした知見をもとに実施した、類似の社会経済的状況ながら社会紛争が頻発している地域としていない地域との比較のための現地調査を行なった結果、開発する側、とくに開発に携わる企業と地域住民との間に対話や理解促進のための公式、非公式のメカニズムが存在しているか、そしてそれが一定の機能を果たしているか否かによって相違が生ずることが明らかとなった。 さらに、そうしたメカニズムの機能には、中央政府や州政府といった国家からの支えの有無が関係していることも判明した。それは、近年、新たに紛争化した事例に、当事者間の利害調整メカニズムの成功例とされていたところが含まれていることからも指摘できることである。そうした例では、国家や州政府が当事者間の調整メカニズムに関与することをある時期からしなくなり、開発する側と地域住民側との間に相互不信が拡大し紛争化に至っていた。 国家の関与については、他のラテンアメリカの例では、元来、国家のプレゼンスが高いか、その時の政府が社会紛争に取り組む姿勢を常に示している場合があり、ペルーの例はそれと対照的な関係にあることも判明した。
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