2015 Fiscal Year Research-status Report
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26590044
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
肥前 洋一 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 教授 (10344459)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 政治経済学 / 実験 / 投票 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度にデザインを開始した実験室実験(「投票の費用」を金銭的費用・機会費用・認知費用に分けて、投票率に対する各費用の効果を測る)について、パソコン画面上で実施するためのプログラムを試作するとともに、先行研究の調査、データ分析の方法の検討を行った。機会費用や認知費用が金銭的費用と同様の効果を持つのであれば、各種の費用をひとまとめにして金銭で表現するという従来の方法で十分であることになるし、異なる効果が観察されるなら、それをふまえたうえで実験をデザインしたり実験結果を解釈したりしなければならないことになる。投票の実験における実験経済学の方法の妥当性が検証できると同時に、選挙の投票率を高めようとするときどの種の費用を下げる方策が効果的であるかにも示唆を与える。 また、投票の意思決定と消費の意思決定の違いを明らかにするため、質問調査のデザインを開始した。質問は、①投票と消費の違いを回答者に直接的に尋ねるものと、②仮想的な投票や消費のシナリオを提示したうえで、それぞれの場面で意思決定しようとするとき回答者が何を重視するかを尋ねて、投票と消費では重視する点がどのように異なるかを確認するものから成る。①をほぼ終え、②の消費のシナリオの作成に取り組んでいる。 さらに、心理学者と経済学者で進めていた実験室実験の論文を完成させて、学術誌に投稿した。個人と個人、グループとグループ、および個人とグループが対峙したとき、先制攻撃を実行しやすいのは「個人と対峙したグループ」であるとの実験結果を得た。心理学と経済学は、それぞれに実験室実験の方法を確立しており、政治学においても研究目的に応じてどちらかの方法を採用することが多い。心理学者と経済学者が協働することにより、それらの方法間の接点が見出されていくことが期待される。本論文は、その第一歩として位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度の実験と調査の実施に向けた作業に入っていること、および先制攻撃に関する実験論文を心理学者との共著により完成させて学術誌に投稿したことから、おおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「研究実績の概要」に記された実験室実験と質問調査の実施を計画している。どちらもそれぞれの専門家と協働している。実験室実験は高知工科大学の実験室で学部学生たちを実験参加者とし、質問調査はインターネット調査会社がモニターとして抱える幅広い世代の有権者たちを回答者とする。
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Causes of Carryover |
質問調査の実施を次年度としたため。質問の作成にあたって他の研究者から受けたコメントをふまえて検討した結果、投票と消費の違いを直接的に尋ねるものと仮想的なシナリオにもとづいて尋ねるものの2つを用意することとした。シナリオの作成にあたってはファイナンスの分野での同様の先行研究を参照しているが、いくつかの仮想的な金融商品(期間と金利などの数字の組み合わせ)を提示して一つを選んでもらうというファイナンスの質問に比べると、仮想的な投票や消費の場面で何を重視するかを選んでもらうという本研究の質問は、回答者にとって理解がやや難しく、質問文に工夫が必要である。これに時間を要している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
質問調査の実施に用いる。質問を作成したうえで、インターネット上にモニターを抱える調査会社に調査の実施を委託する。
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