2014 Fiscal Year Research-status Report
所有権ルールと損害賠償ルールの法的選択に関する進化ゲーム的アプローチ
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26590046
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
常木 淳 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (10207425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
座主 祥伸 関西大学, 経済学部, 准教授 (40403216)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 法と経済学「国際情報交換、USA」 / 進化ゲーム理論「国際情報交換、カナダ」 / 所有権「国際情報交換、カナダ」 / 不法行為「国際情報交換、USA」 / 法と社会規範「国際情報交換、USA」 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ロースクールにおける「法と経済学」学習のための基本書として「法律家をめざす人のための経済学」(岩波書店、2015年1月)を刊行し、その中で、法律家が経済学の基本を学ぶために必要な基礎知識を詳細に解説し、その過程を通して、「法と経済学」の基礎概念を精査し、方法論的な基本的再検討を行った。 2.所有権と不法行為法の経済分析について、コース、カラブレシ、シャヴェル、キャプローの研究文献を分析した。R.クーター、E.ポズナーらによる「法と社会規範」に関する研究には特に力点を置き、彼らの基本文献を拡張した専門論文を研究代表者と分担者の共著として学術誌に投稿し、現在、改訂稿を審査に付している。 3.それらを前提として、本研究課題に直接関係する文献として、所有権の生成に関する進化論ゲームに基づく理論分析を行っているM.エスワラン、H.ニアリーの研究を、公刊された論文および入手可能なディスカッション・ペーパーに基づいて精査した。 4.先端的研究動向の把握 2015年2-3月に、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学経済学部を訪問し、エスワラン、ニアリー教授へのインタヴューを行い、進化ゲーム理論の「法と経済学」、特に所有権の生成、ならびに、不法行為に関する応用研究の可能性について議論するとともに、1か月間、同系統の研究に集中した。この間、両教授から、近年における進化ゲーム理論の最新の成果を示す論文をいくつか紹介され、これらを今年度以降、詳しく学ぶこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究主題の前提となる「法と経済学」に関する基礎概念と方法論の検討については、教科書の執筆を通して概ね完成することができた。所有権、不法行為に関する基礎文献の収集と精査も、順調に進んでいる。 所有権の生成に関する進化ゲーム理論的分析について、カナダでの調査に基づき、当該分野の近年における研究成果を知ることができた。これらをもとにした「法と経済学」に関する学術論文を完成できるかどうかについて現在模索中であり、今後2年間の研究の推進過程で答えを出してゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも、「法と経済学」、ならびに、その理論的な基礎となる進化ゲーム理論についての最新の研究成果を収集して、分析、検討を行うことにより、独自の学術論文の形をとる研究成果へと結び付けたい。 他方、先年度のカナダ訪問時に、エスワラン教授との議論の過程で、筆者の問題意識が、進化ゲーム理論よりも、規範的なバーゲニング理論に関連しているのではないかとの指摘を受けた。筆者の研究のきっかけとなったエスワラン-ニアリー論文を、バーゲニング理論へと応用する可能性について検討するため、今後、これらの研究分野へも関心を広げてゆきたいと考えている。
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