2014 Fiscal Year Research-status Report
近世国家形成期におけるイギリス自治都市の公式と非公式―複眼的経済史研究の方法―
Project/Area Number |
26590053
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川名 洋 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70312527)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 制度 / 法人化 / 産業集積 / 国家形成 / 法 / 手工業 / クラフト / 議会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はイギリスの自治都市を主な研究対象に、公と私、富裕層と貧困層、男性と女性、あるいは、形式と実際という二項が対立して錯綜する経済社会へ接近するための社会経済史の新しい研究方法を確立することを最終の目的とする。かかる目的を達成するために、複眼的分析手段となる「公式」と「非公式」という新たな分析概念を用いその有効性を検証するため、産業革命以前の国家形成期において、経済発展を支えた市民性の芽生えとそれを全国に浸透させた都市化の意義解明を試み、草分けとなる経済発展が市民の関与する社会的プロセスに連動するという西欧近世の特質へせまる。 本年度の研究では、非農業人口の増加と都市への人口集中など経済環境の変化が制度、組織、都市景観へ影響し構造面での都市化をもたらすというこれまでの研究成果を踏まえ、都市経済を取りまく統治構造を中心に各都市の公式領域の実態について既存の研究成果を精査し論点の整理を行った。その結果、法人格という公の政体を有する自治都市に着目する意義として、地域的利害を請け負う都市自治体と国全体を統括する政府・議会との対立と交渉を通じて顕著になる自治都市の公式性が浮き彫りになることに加え、市内で伸びる私的経済活動がやがて「法」に律せられる様子も把握できることがわかり、「公式」と 「非公式」との依存関係を体現する自治都市特有の政治経済構造の解明に有効な分析フレームワーク構築の手掛かりを得た。こうした分析フレームワークを適用し、さらに自治都市の公共的および私的な場で展開される経済活動を考察することにより、ヨーロッパの中世・近世都市では個人の経済活動が公に認知された市民的政治共同体を生む西欧特有の歴史プロセスを効果的に実証できる。本調査では、この点を踏まえ必要な基礎資料を整えつつあり、現在、実証分析に向けた予備的研究を継続している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「公式」と「非公式」という新たな分析概念を用いその有効性を検証する本研究の目的に必要な基礎資料の調査と収集が支障なく進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究成果により得られた知見をもとに、実証研究に向け予備的研究を継続する。これに加えて、自治都市の公式性を解明するためには関連する制度蓄積の状況を十分把握する必要が生じたため、都市経済を律する法制度に関する資料調査も視野に、都市ビジネスとガバナンスとの関係を具体的に知る上で効果が期待できる方法について精査する。
|
Causes of Carryover |
当該年度の研究において国内図書館等所蔵の資料調査と収集を優先し、当初予定していた旅費の執行額が抑えられたため。また、年度により刊行される図書に予想できない増減があり、本年度の特に関連図書の刊行が少なく、購入するための使用額も少なくなったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度以降において、当初計画したよりも国内外において収集すべき資料とその調査量が増えることが見込まれるため、翌年度以降の関連資料の調査・収集に向けて当該助成金を次年度の旅費・物品費等に合算して使用する。
|
Research Products
(1 results)