2014 Fiscal Year Research-status Report
認知言語学的アプローチによる異文化組織行動論の再構築
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26590058
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関口 倫紀 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20373110)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 経営学 / 言語学 / 組織行動 / 国際経営 / 多国籍企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度であった平成26年度は、言語学・認知言語学関連分野の体系的再構築と組織行動論との統合、および認知言語学的視点から組織行動を研究するための研究方法論の確立の2つを目的とした活動を中心に研究を行ってきた。 まず、言語学、認知言語学関連の幅広い文献の収集を行い、言語学および認知言語学分野の全体像の把握と、組織行動論の分野への適用可能性について吟味した。さらに、当該分野における主な研究方法論について吟味し、組織行動論分野に応用可能な言語学的実験方法や調査方法についてのノウハウを蓄積した。次に、言語学や認知言語学を、組織行動論、人的資源管理論、国際経営論に応用しようとする萌芽的な研究を検索し、収集できた最新の研究成果を吟味した。さらに、言語と文化は、組織行動に影響を与えるという面において密接な関係にあることから、言語と文化の双方を扱った文献を収集し、両者の共通点・相違についての文献研究を行った。 上記の文献調査に加え、海外から関連分野の研究者を招いて、言語と組織行動、人的資源管理についての研究会を開催し、今後の研究についての意見交換や共同研究の可能性を模索した。研究方法論の確立という視点については、パイロット調査の一貫として、既に実施済みの言語的要素を含むアンケート調査の予備調査を行い、今後の本格的な研究につながる興味深い発見を得た。そして、本年度の研究成果の一部として、言語的要素を加えた国際人的資源管理のテキストの制作を開始した。従業員の英語力と企業のグローバル化へのコミットメントへの関係についての共著論文の公刊も決定している。さらに、言語学と国際経営に関するシンポジウムの指定討論者の役割を果たすなど、学会における研究成果の発信を積極的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度における、文献収集と研究方法論の確立を目的を中心とした諸活動を通じて、言語学もしくは認知言語学と組織行動論を融合させた研究を推進し、今後、研究成果を蓄積していくための見通しが立ってきたといえる。言語学と組織行動論の融合は真に萌芽的であって既存の先行研究の数が限られているため、すぐに優れた研究成果を出していくということは難しいかもしれないが、言語学・認知言語学分野の文献の収集と分野の理解を進めていくことによって、質の高い研究を遂行していくことは可能だと思われる。 研究方法論の確立という視点において、当初予定していたほど多くのパイロットスタディを行ったわけではないが、言語的要素の入ったアンケート調査の分析や、言語学的な実験デザイン、調査デザインの習得を通じて、平成27年度以降の本格的調査実施に向けた準備が整いつつある。その他、言語学と組織行動論や人的資源管理論の融合に関連する学会やシンポジウムに参加したり、自ら研究会を主催し、外国の有力研究者との交流や、シンポジウムでの指定等論者の役割をつとめるなど、積極的に当該分野の研究活動の普及活動を行ってきた。 上記のような諸活動は、本研究課題における斬新な研究成果の導出や、言語学と組織行動論の融合という新分野の確立に向けて着実に前進していることを示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、引き続き、言語学および認知言語学と組織行動論との融合を目的とした文献調査を押し進め、当該分野の理解の深耕を図る。その上で、言語学的組織行動論という新たな分野を構成する複数の研究課題を特定し、それぞれについて、大枠となる理論的枠組みおよび概念モデルを構築していく。これらの概念モデルを機会があるごとに関連する研究者などに提示するとともに意見交換を行い、より有効なものに改善していく。そして、理論的枠組みおよび概念モデルから、実証研究で追究するべきリサーチクエスチョン、命題、仮説を導くとともに、多国籍企業で働く従業員へのインタタビュー調査などの質的調査を実施し、現実で起こっている現象から帰納的に概念モデルの改善点や、新たなモデルや、仮説等を導いていく。 また、言語学と組織行動論を融合させる研究方法論を確立させるための活動を引き続き行い、上記の理論的活動によって導きだされるリサーチクエスチョンや仮説を、学生サンプルや社会人サンプル、とりわけ多国籍・多文化・多言語な人々からなるサンプルなどの幅広いサンプルを対象として、実験やアンケート調査を用いて実証する。収集されたデータの分析を行い、理論や仮説の修正を行い、発見事項を論文としてまとめていく。さらに、研究成果を国内外の学会で報告するととともに、国際学術誌への投稿を通じて世界に向けた発信を目指していく。
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Causes of Carryover |
平成26年度の活動をしていく中で、当該分野の理論枠組み構築のための文献研究に費やす時間を増やし、その分、調査出張およびパイロットスタディの一部分を次年度に繰り越す意思決定を行ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、平成26年度に行わなかった調査出張およびパイロットスタディの実施に用いる予定である。
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