2015 Fiscal Year Research-status Report
中堅企業における各アクターからの経営陣に対する掣肘の重みに関する研究
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26590059
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
吉村 典久 和歌山大学, 経済学部, 教授 (40263454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀口 朋亨 京都外国語大学, 外国語学部, 准教授 (20568448)
曽根 秀一 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 講師 (70634575)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中堅企業 / 同族企業 / コーポレート・ガバナンス / 企業組織 / 掣肘 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、コーポレート・ガバナンス(企業統治)のあり方が企業行動・業績にいかなる影響及ぼすのか、最終的には計量的な検証を試みようとするものである。 昨年度は、関連する諸研究のレビューを行った。コーポレート・ガバナンスの問題については、ファイナンス論や労働経済学の分野において、とくに多くの研究が展開されてきたが、本研究は、経営者の任免や意思決定、とくに中堅企業における、を対象とする研究のため、経営戦略論や組織論をベースとした中堅・中小企業論、ベンチャービジネス論、戦略論のなかでも企業成長を取り扱った諸研究、中堅企業などの研究のなかでもとくに長寿・老舗企業を対象とした研究など、広範囲にわたる既存研究の再検討を行った。昨年も説明したように、経営者の育成・選抜、監視などには多様なファクターが影響を及ぼしているが、とくに「経営理念」と呼ばれるものの存在が、コーポレート・ガバナンスのあり方に相当の影響を及ぼしていることが浮かび上がってきた。また大規模な企業に比較して、「地縁」といったファクターも、経営者の行動を左右することが明らかになっている。 本年度は、昨年度までの調査を踏まえて、国内のみならず、海外の学術誌(Business History)にも論文を発表するなど、研究期間の中間としては十二分の研究成果を上げたということができよう。 次年度は、これまで同様にインタビューを継続して行うと同時に、定量分析を行うためのアンケート調査を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存研究のレビューは広範囲にわたってのそれを実施できており、また、インタビュー調査の対象先の選択やそれらの経営情報に関する公刊情報の収集、それらに向けてのインタビュー調査も複数回、実施しており、進展を見せている。 また、impact factorが算出されている海外の著名な学術誌に論文が掲載されるなどの大きな成果を上げている。 学会発表件数は、総計で2件と多くはないが、本年度は28年度に海外で発表するために準備を行っており、計画通りであるといえる。学会発表のうちの1回(日本経営学会第89回大会)は学会側から依頼されての発表(招待講演)であった。発表では、大手企業のみならず中堅(同族)企業の統治における従業員の役割についても言及し、研究の成果が盛りこまれたものとなっている。これまで検証してきたミドル層がコーポレート・ガバナンスに多大な影響を与え、「より良い経営」実現の一助になっている事例を数件説明した。 平成28年度においても、これまで以上にインタビュー調査の深化を希求していくが、定量分析のためのアンケート調査の実施を行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
インタビュー調査では、事業分野・資本構成・歴史などを踏まえてインタビュー先の企業の選定を進めた。現在は同族企業がインタビュー調査の中心となっているが、非同族企業にも焦点を当て、インタビュー調査を行うようにする。また、先に述べたようにアンケート調査の実施も見込んでいる。 繰り返すが、「地縁」がコーポレート・ガバナンスに大きな影響を与えていることが明らかなため、掣肘を与える重要なアクターの一つが、地域社会であることを明らかにしたい。同族企業が大きな力を持っている中南米のメキシコ(5月17-20日)で開催されるIFSAM(International Federation of Scholarly Associations of Management)でこれまでの成果の一部を発表することにより、現地の研究者からのコメントを得ることにしている。また、国内でも日本経営学会、組織学会、日本ベンチャー学会、ファミリービジネス学会などの会員からもフィードバックを得、内容等を真摯に再検討し、国内有力学会誌または海外の国際学術誌への投稿を行いたい。
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Causes of Carryover |
国際的な学会、コンファレンスでの発表を検討しており、それに向けての使用を考えていたが、その機会が2016年度となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年5月、メキシコにて開催される国際的な学会(IFSAM)にて、"Employee's ongoing Commitment to Better Performance on the Corporate Governance-Case Study of Japanese Enterprises"と題する発表を予定しており、それに向けて使用する。 くわえて、国内も含めた研究成果の発表に向けての使用を計画している。
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