2014 Fiscal Year Research-status Report
グループ消費における顧客満足の形成モデル:文化的自己観を要因とした日米比較実験
Project/Area Number |
26590074
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
土橋 治子 青山学院大学, 経営学部, 教授 (90333236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 光司 中央大学, 戦略経営研究科, 教授 (40329008)
齊藤 嘉一 明治学院大学, 経済学部, 教授 (50328671)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 商学 / サービス / 顧客満足 / 文化的自己観 / グループ消費 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、顧客満足形成プロセスに対して他者の満足度の知覚が影響するか否かを、日米顧客の比較実験によって明らかにすることである。この研究の特徴は、グループ消費という文脈に注目し、サービス消費時のグループ内の他者に関する心理プロセスおよびその心理プロセスが顧客満足形成に対して与える影響を、文化的自己観という調整変数を導入して検討することである。この研究は、「顧客の満足度は、顧客個人によって決定される」という従来型の「自律的な個人型顧客満足モデル」という支配的な見方に挑戦し、結果として「グループ共有型の顧客満足モデル」の提案を目指すものである。 平成26年度においては、作業仮説の設定、実験デザインおよびデータ収集が実施された。本研究における仮想シナリオ実験は、日米を前提とした国際比較実験である。これに伴う等価性などの問題をできる限り回避するため、バック・トランスレーション(逆翻訳)されたシナリオおよび質問項目が利用された。データの分析結果が示唆していたのは、満足形成の際に、他者の存在やサービスに対する反応をどの程度考慮するかは、当該顧客が保持する文化的自己観によって大きく異なるという点であった。例えば、日本人は周囲の状況に目配りし、「空気を読んで行動する」と言われてきた。それを示唆するかのように、自身の満足度が高くとも、一緒にそのサービスを提供されている他者がネガティブな反応を見せているときには、自分の満足度を過小評価する傾向が読み取れたことから、われわれの仮説はおおむね支持されたといえる。 しかしながら、グループ共有型の顧客満足モデルを提案するには、更なるデータの裏付けが必要であると考えている。平成27年度においては、更なる研究の深化を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画よりも進展があったため、平成27年に実施予定であったデータ収集(実験2)を平成26年度に実施すべく前倒し請求を行った。その意味では「当初の計画以上に進展している」と評価すべきであるが、結果的にデータ収集(実験2)を行うことはできなかった。実験2の理論的枠組みや実験条件の再検討を加える必要が出てきたためである。しかしながら、実験1に関する作業仮説の設定、実験デザインの考察、日本および米国においてデータ収集が終了しているという点で、予定されていた研究計画はおおむね順調に進められたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、平成26年度に引き続き、データ収集(実験2)および分析が継続される。これを実施するための最初のステップは、実験2に関する理論的枠組みや実験条件の再検討である。実験1との対比でいえば、仮想シナリオの場面設定の変更、他者との関係性(リレーションシップ)に関する再考などがあげられる。過去の先行研究があまりない研究領域であるがゆえに、研究者間で徹底的に議論を重ねることが必要になってくると思われる。
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Causes of Carryover |
平成27年に実施予定であったデータ収集(実験2)を平成26年度に実施すべく前倒し請求を行ったが、理論的枠組みや実験条件の再検討を加える必要が出てきたため、結果的に実施には至らなかった。このことが次年度使用額を生じさせた直接の理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、Association for Consumer Research(Asia-Pacific Conference)での成果発表が確定したため、開催地、香港への渡航費用、滞在費用、学会参加費などの支出を行う予定である。この支出を優先した場合、当然、実験2の実施に支出できる金額は限られたものになるが、その範囲内で可能な限り実験2の準備を行う予定である。
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