2016 Fiscal Year Annual Research Report
Towards accounting regulations to eradicate fraudulent accounting
Project/Area Number |
26590080
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 達司 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (80191419)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 聡志 同志社大学, 商学部, 教授 (70338234)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 財務会計 / 利益調整 / 新規株式公開 / 会計実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、会計不正が生じる可能性が高い状況として、企業の新規株式公開(IPO)に注目し、「なぜ企業の創業者はIPO直前に会計操作を行うのか、なぜ主幹事証券会社は会計操作を見過ごし、高い公募価格を設定するのか、なぜ新規株式公開日に市場において、公募価格より高い初値が実現するのか」という問題について考察している。 この問題を検討するにあたって、創業者、主幹事証券会社、一般投資家をプレイヤーとし、株式の需要曲線が右下がりである行動経済学的な世界を想定して、理論モデルを構築し、理論モデルの予測を実験により検証した。 結論を要約すると、次の通りである。創業者は自身の利得を高めるために、高い公募価格の設定を望み、そのためにIPO直前において、利益増加型の会計操作を行う。一方、主幹事証券会社の利得はIPO時に売却した株式の売却総額の増加関数であるから、主幹事証券会社も、IPOにおいて株式売残りリスクがないなら、会計操作を見逃し高い公募価格を設定する。一般投資家はこの状況を知らないので、IPO後も短期的には株式が高騰する状況が継続する。つまり、「money left on the table」現象が発生する。そして時間が経過し、創業者・主幹事証券会社と一般投資家間の情報の非対称性が解消されれば、株価はその本源的価値まで下落する。つまり、「long-term underperformance」現象が発生する。 本研究は、「money left on the table」と「long-term underperformance」が同時発生するというIPOパズルについて、1つの説明を提供している。
|