2015 Fiscal Year Research-status Report
「同時決定」の分析手法を用いた会計学基礎理論の展開
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26590084
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
高尾 裕二 摂南大学, 経営学部, 教授 (60121886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椎葉 淳 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60330164)
石椛 義和 神戸市外国語大学, 外国語学部, 講師 (20553142)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 会計情報 / 同時決定 / 企業投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現在、グローバルなレベルで支持を得ている会計の基本機能を「投資者の証券投資意思決定に役立つ」とみる情報提供機能を前提に、経済学で用いられる「同時決定」の分析枠組みを用いて、望ましい会計・開示のあり方を探ろうという分析視角を理解・体得し、さらに展開させようとするものである。 本年度は、「同時決定」の分析枠組みを用いた研究成果のうち、一方で企業・経営者サイドの意思決定として企業設備投資を、他方の投資者(資本市場)サイドの意思決定は企業のプライシング(企業の価値評価)を取り上げるC.Kanodia教授を中心とする、いわゆる「リアルな影響の観点」の一連の成果を丹念に精査した。その結果、ますは①異なる会計制度を前提に異なる情報内容をもつ会計情報を含む、資本市場サイドにおいて利用できる情報集合が画定される。次いで②①で確定された情報集合のもとで、資本市場は企業の投資を含む企業の活動ないし業績を推測し、企業をプライシングする。③企業の方もまた同様に、資本市場がどのように自社をプライシングするのかを推測し、最大のプライシングがなされるよう投資などの意思決定を行う、という共通の分析枠組みがみられることを確認した。 このような「リアルな影響の観点」の分析枠組みの特徴の一つは、これまでの多くの「開示インセンティブ・モデル」にみられた企業の清算時点での最終価値(あるいは最終配当)ではなく企業の継続性を前提とした株価に焦点を当てることであり、そのことによって、会計・開示のあり方が、企業の取引を変え、よって将来生み出されるキャッシュフローを変化させ、引いては会計・開示のあり方が文字通りの資源配分に影響を与える状況をうまくとらえる主要な鍵であることを理解・確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、3年間の研究期間の2年目にあたり、C.Kanodia教授を中心とする「リアルな影響の観点」の一連の成果を丹念に精査し、その特徴ある分析枠組みを理解し、体得することであったが、「同時決定」の分析枠組みを用いた分析モデルの構築という最終年度の成果に向けて、この目標・目的は、おおむね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初からのネライは2つである。その一つは、「企業投資」をキーワードとして、新しい視点から、会計学と経済学の接合を模索し、会計学基礎理論の展開の可能性を検討することであり、その2は、具体的な会計処理を念頭に置き、われわれなりの「同時決定」の分析枠組みを用いた分析モデルの構築に向けて努力することである。最終年度では、これら2つの課題について、少しでも具体的な議論を展開することである。
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Causes of Carryover |
本研究は、3年計画であり、27年度はその中間期間の2年目であり、次期の繰越額も僅少である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
摂南大学では、経済学・経営学関係のデータベースがほとんど整備されていないことから、物品費、とりわけデータベースの充実に使用したいと考えている。
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Research Products
(2 results)