2015 Fiscal Year Research-status Report
大東亜共栄圏構想と国民のアジア語学習に関する研究―馬来語の事例
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26590099
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
小林 和夫 創価大学, 文学部, 教授 (00546129)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 馬来語 / マライ語 / マレー語 / 大東亜共栄圏 / アジア語 / 外国語学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 具体的内容 本研究では,馬来語(こんにちのインドネシア語・マレー語)を事例として,アジア・太平洋戦争期における大東亜共栄圏構想の鼓吹・浸透に国民のアジア語学習がはたした機能の分析を行ってきた.研究においては「戦時下における国民のアジア語の学習熱が大東亜共栄圏構想を国民のあいだに実体化・身体化する力をうみだし,大東亜共栄圏構想の鼓吹・浸透に親和的に作用した」という作業仮説を基底においている. 具体的には,馬来語を中心として,①文部省の戦前・戦中期における外国語教育政策の展開,②戦時下における国民のアジア語学習の動機・手段・方法,③旧制外国語学校・専門学校・高等商業学校などの外国語教育機関におけるアジア語教育の方針・カリキュラム,④大東亜共栄圏構想に対するアジア各国語の位置づけ―の4つの課題を解明している.
2. 意義・重要性 これまでの先行研究は,アジア・太平洋戦争期における雑誌(佐藤 2002)などのメディアや,観光・記念行事(ルオフ 2010)などのイベントが,大東亜共栄圏構想への自発的な「参加」を国民に促したことを明らかにした.しかし,管見の限りでは,大東亜共栄圏構想への自発的な「参加」と国民のアジア語学習とを明示的に関連づけて詳細に論じている研究は,国内外とも存在しない.アジア・太平洋戦争の遂行や動員は「強制」や「抑圧」だけでなく,「デモクラティック」な文化的要素を帯びていた (福間 2012).であるならば,国民の外国語学習という文化的・教育的な要素をもつ営為が,大東亜共栄圏構想に親和的に作用したという文脈で研究が行われてもよいはずである.本研究の意義・重要性はこの点にある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な研究課題となる4点,すなわち,①文部省の戦前・戦中期における外国語教育政策の展開,②戦時下における国民のアジア語学習の動機・手段・方法,③旧制外国語学校・専門学校・高等商業学校などの外国語教育機関におけるアジア語教育の方針・カリキュラム,④大東亜共栄圏構想に対するアジア各国語の位置づけ―に関する資料収集はおおむね順調に進んでいる.ただし,③についてはより広範な資料収集が必要になっているため,十分に留意したい.
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題としてあげた①文部省の戦前・戦中期における外国語教育政策の展開,②戦時下における国民のアジア語学習の動機・手段・方法,③旧制外国語学校・専門学校・高等商業学校などの外国語教育機関におけるアジア語教育の方針・カリキュラム,④大東亜共栄圏構想に対するアジア各国語の位置づけのうち,④については,収集した馬来語教科書・文法書・研究書をデジタルデータ化し,量的にも分析を加える必要がある.このため,あらたに計量歴史学的な分析手法も採用して研究を進めたい.今年度はこれまでの研究の成果を学会発表および論文としてかたちにしたい.
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Causes of Carryover |
予定していた図書の購入ができず,26年度繰越し金が発生したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は最終年度になるため,研究費使用については予定支出額どおりの執行を適正に行いたい.
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