2015 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設における解決志向的環境調整に関する実践的研究
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26590106
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
柴田 健 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (50361001)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / WOWWアプローチ / 感情調節困難 / 人生の樹 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き児童養護施設職員に対する半構造化面接を行った。今回重点的に行った質問は,昨年度の③施設内で子どもたちに起きていること,④何をすることが子どもたちの施設内の適応を高めることにつながるか,⑤施設内で成功している試みは何かという3項目に加え,⑥子どもたちのライフヒストリーを処遇の中でどのように扱ってきたか,⑦今後どのようにライフヒストリーを扱うことができるかを尋ね,これらを昨年度の調査にさらに積み重ねる形で収集した。これに加え,研究代表者による参与観察が時々実施された。 面接調査の中では,ライフヒストリーに対する認識の希薄さが子どもたちの施設内での表面的な適応につながっていることを危惧する内容が表れるものの,ライフヒストリーそのものを処遇に結びつけることについては,入所している子どもの多くが虐待を体験していることから躊躇していることが明らかとなった。この部分での処遇の手詰まり感は,多くの職員が考えとして抱いていることだった。また,参与観察の中では職員から「発達障がい」という言葉も多く聞かれた。しかし,「発達障がい」と虐待やネグレクトに伴う問題行動との関連性に関する認識は希薄であり,このことが子どもたちの処遇の食い違いにつながっていることがうかがわれた。そこで,研究代表者は「発達障がい」様の行動と虐待やネグレクトに伴う問題行動の関連性を感情調節困難という視点から捉えるこために関係者に対するレクチャーの機会を何度か持った。 さらに,WOWWアプローチを段階的に導入し,加えて子どもたちへの「動的施設画」を実施したが,WOWWアプローチの「ステップ1:施設内にあるうまく行っている部分や既にできている部分を探し出す」,において運用がうまく図れなくなってしまっている状況にあり,両方とも停止している状況にある。このことについては今後検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
虐待やネグレクトが子どもたちの感情調節に影響を与えるということが職員に浸透していたが,このことと発達障がいとの関連性が不明確だったことが,調査と参与観察から明らかになった。そして,これらの認識の曖昧さが処遇上の食い違いにつながっている可能性が考えられた。これを感情調節困難の視点から捉えることで理解を図ろうとしたが,感情調節困難に対する処遇技術を研究代表者自身が身につけるために何回かのワークショップに参加する必要があった。そのため考え方そのものを導入するのに時間がかかってしまった。 またWOWWアプローチの導入を行ったが,研究代表者自身,解決志向的考え方と感情調節困難,ライフストーリーの視点が曖昧だったために,有効な結果を残すことができず,継続することができなかった。 よって,進捗状況を遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はWOWWアプローチと人生の樹を融合した形での処遇プログラムの実施が中心となる。また,感情調節困難に対しては,職員と子どもたちそれぞれに対しての心理教育を行うことが必要となると考えている。職員に対する心理教育はこれまで随時行ってきたのだが,まだ十分とは言えない。子どもたちに対する心理教育については,弁証法的行動療法の考え方を用いて全く新しいものを考案する必要があると考えている。 また,子どもたちへの「動的施設画」の調査も継続させていく必要がある。対象となる子どもへの「動的施設画」の実施の後にWOWWアプローチと人生の樹を融合した処遇パッケージを導入したいと考えている。
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Causes of Carryover |
26年度に引き続き,研究代表者による参与観察とインタビュー調査が中心となった。その中で,昨年度予想していた状況とはかなり異なった状況が確認されたため,介入研究そのものが不十分な形になってしまった。そのために人件費等の支出が見送られてしまった。 経費の多くは研究代表者のスーパービジョンにかかる経費とWOWWアプローチの試験的運用のための環境整備に使用された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「今後の研究の推進方策」でも示したとおり,今後はWOWWアプローチと人生の樹を融合した包括的な処遇パッケージを考案し,実施する必要がある。そのために,人件費を含め前年度支出されなかった経費が使用することを予定している。 また,筆者は現在継続的に感情調節困難に関する事例のスーパービジョンを受けており,旅費等は発表に加え,このための経費として支出される予定である。
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