2014 Fiscal Year Research-status Report
ADAにおける「容貌の障害」を理由とする差別―日本への示唆を中心に
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26590121
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西倉 実季 同志社大学, 文化情報学部, 助教 (20573611)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 障害差別禁止法 / ADA / 容貌の障害 / ディスアビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、あざや傷痕など、容貌の障害をもつ人々を含めて障害差別の解消に取り組んでいるアメリカの裁判記録に注目して、容貌の障害を理由とする差別の具体的事例を収集すると同時に、「容貌の障害」の範囲を明らかにすることである。 平成26年度の前半は、後半に実施する裁判記録の収集・分析の準備作業として、「障害をもつアメリカ人法(Americans with Disabilities Act: ADA)」の基本的枠組みと概要に対する理解をよりいっそう確かなものとするための文献調査に取り組んだ。具体的には、ADAの基本的枠組みと「障害」の定義、同法が定める具体的な差別禁止措置について概説した文献、障害学および障害法学の観点からADAにおける「障害」の定義と保護対象の範囲を検討した文献、ADAが障害者の雇用に与えたインパクトを批判的に考察した文献などの調査を進めた。 年度の後半は、ADAを根拠として「容貌の障害」を理由とする差別が争点になった裁判の記録を収集した。連邦裁判所のうち、地方裁判所、控訴裁判所、さらに最高裁判所で行なわれた裁判の中から、容貌の障害をもつ人およびその代理人が原告となった裁判であり、雇用分野での「容貌の障害」を理由とする差別が争点になったという条件を満たすものを収集した。収集した裁判記録に関しては、訴訟当事者名(事件名)、ドケット番号(事件整理番号)、管轄裁判所、サイテーション番号、当該判決の結果などの基本情報をエクセルに入力し、分析対象とする裁判記録の一覧表を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた文献調査と、資料の収集・整理をおおむね終えることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の前半は、前年度の後半に収集した裁判記録の分析を継続する。前年度の作業が、「容貌の障害」を理由とする差別の個別事例を蓄積・整理することであったのに対し、今年度行うのは、ADAにおける「容貌の障害」の定義の実質的な基準を明らかにするための分析である。 年度の後半は、ADAにおける「容貌の障害」の定義について、障害学や障害法学の立場から理論的に検討している先行研究の調査を実施する。ADAにおける「障害」の定義と極度の肥満との関係を考察したRhode(2009, 2010)、Thompson(2009)、Korn(2010)などの先駆的論文を精査することで、ADAの「容貌の障害」の定義は、障害者の不利の原因を心身の機能障害それ自体に求める「障害の医学モデル」を温存しているのではないか、という仮説を検証する。
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