2016 Fiscal Year Research-status Report
障害者雇用が与える社会的影響を測定するための新たな効果評価指標群の開発と検証
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26590127
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Research Institution | Hamamatsu Gakuin University |
Principal Investigator |
小佐々 典靖 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 講師 (50641437)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 障害者雇用 / 効果測定 / 指標開発 / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、障害者が働くことによる直接的効果と間接的効果を適正に測定する複数の指標を開発し、それを統合することにより、障害者雇用の波及効果を総合的に評価することである。 平成28年度は、前年度までの研究を踏まえて基礎情報の再整理し、ミクロモデル案およびマクロモデル案の策定を第一の目標とした。また、最終年度であるため、指標の策定およびその検証も視野に入れて研究を進行させた。 前年度に設定したミクロモデル案については、複数の研究者および実践家と意見交換をした結果、内容の整合性に問題があることがわかり、再々修正をしているところで年度末を迎えた。最も多かった指摘は、研究内容と現場での理解の違いと乖離であった。 このため、前年度に指摘を受けた障害の概念や地域性について改善するために、先行研究を再整理すると同時に、実践家と協働可能な体制を整備を模索した。障害の概念については、必ずしも統一されておらず、汎用性の高いものを選択することとした。同時に、静岡県内で雇用前後の就労支援を行うNPO法人と協議し、協働することとなった。その結果、本年度後半より、個別支援の結果や経緯へのデータアクセスの許可を得た。これにより、ミクロモデルおよびマクロモデルの策定を実践の結果ベースで策定することが可能になった。 本来であれば最終年度ではあったが、研究環境の変化や関連施策の変化などもあり、充分な知見を整理するには至らなかった。このため、次年度まで研究を継続する申請を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度、本研究の進行を妨げた最大の要因は、研究計画策定時に想定していなかった実践現場と研究計画の乖離であった。報告者は、障害者就労移行支援事業所や社会福祉法人との関係を考慮しながら研究計画を策定したが、障害者雇用企業の意識と福祉サイドの意識のズレや地域間格差および地域内格差などが、想定を遙かに超えた差異となって確認された。これは、報告者の研究の方向性を大きく変更する要因になっている。ただ、本年度後半になり、徐々に状況は改善してきたところである。 また、前年度と違い所属機関の変更はなかったが、業務分担が大きく変化し、予想よりも時間がとれない状況は続いた。前年同様、発表すべき学会の開催や準備時期と業務(実習指導であり、長期休業期間がほぼすべて)が重なり、参加できない状況も続いている。これは次年度も改善できそうになく、課題を抱えたままである。所属先の変更についてはリスクを伴うため、所属機関内で配慮を求めているところである。 なお、体調についても不安を抱えたままで研究を続けており、通院治療が欠かせない状況も続いている。特にパニック障害については、一時期と比較しても悪化しており、心身ともに研究の遅れに直結してしまった。万全を期したいが、この点の不安は残ったまま次年度に向かうこととなる。前年度から継続している家族の問題を含め、研究内容以外の要因が与える影響も大きかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度同様、所属先業務については、大きな改善は見込めないと考える。この点の懸念は残るが、地域内の支援組織と協働することが可能となったため、モデリングと指標抽出が出来る環境が整ったと考えている。同時に、本年度末に、統計解析ソフトを購入させて頂いたため、モデルの整合性についても検証可能な環境が整った。また、研究補助員(所属先の大学生)を雇い、諸雑務を軽減することも予定している。このように、本年度よりも研究内容に集中できる環境を整備した。数値データの入手はほぼ終わっているため、適切な分析を加え、モデルとの整合性を検証できると考える。 次年度は、ジョブコーチを軸とした部分の実践・研究報告(次年度11月前後を予定)を行うと同時に、各モデルや指標の整理も行い、最終報告につなげる計画である。また、本年度は投稿できなかった論文発表についても、本年度後半に行う予定である。 なお、論文としての公表だけでなく、本年度の研究終了時点で報告書をまとめ、早期に公表する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の使用金額は概ね予定通りであったが、使用細目にズレがあった。未だに新たな情報を収集する必要があることから、書籍を中心に物品費が増加している。その他の物品については概ね予定通りであったが、学会への参加を見合わせたことから、旅費の使用が抑制された。同時に、打ち合わせが多かったにもかかわらず、謝金が予想よりも抑えられた。これは、情報交換であり、双方の利害が一致したため、謝金は不要であった点が大きい。今後は、データ検証を依頼する可能性があることから、研究者への謝金の支出が増加することが予想される。また、資料整理などの人員は募集したが、適切な人材の確保が出来なかったため、本年度は保留した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会報告の旅費(共同研究者を含む)、人件費・謝金の増加が見込まれる。また、書籍や論文取り寄せについても、引き続き必要であり、支出が増加すると予測される。同時に、研究成果報告書の発行についても念頭に置いているため、予定通り消化すると考えている。
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