2014 Fiscal Year Research-status Report
造血肝細胞移植を受ける患者の心的世界の変遷への理解とその支援に関する研究
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26590157
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
石黒 千映子 岐阜大学, 医学部, 准教授 (80315895)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 造血幹細胞移植 / 患者心理 / 臨床心理士 / 心理支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血器腫瘍の治療において唯一治癒が望める治療法である造血幹細胞移植(以下、移植とする)は、移植は化学療法の有害事象や移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)などによる身体機能への影響、行動制限、社会的不利などの様々な障害を抱えることになる。そのため、患者は移植前から社会復帰後の長期にわたり心理的な苦痛を抱え続けるが、造血器腫瘍患者の一般的な特徴として忍耐強く抑制的な傾向が強いことが指摘されており、一人で心理的な苦痛を抱えている可能性は高い。これらのことから、臨床心理士が積極的かつ継続的に介入する必要があると考える。本研究の目的は、多職種からなる医療チームの一員として臨床心理士が果たすべき役割を明確にし、移植前から社会復帰後までの継続した心理的な支援の在り方を見出すことである。平成26年度の計画は、1.先行研究の収集と分析、2.質問紙およびインタビューガイドの作成、3.研究協力者の選出、4.調査協力施設の選出と依頼(移植医療に携わっている臨床心理士への協力依頼も含む)であった。1.先行研究の収集と分析については、国内外で発表された先行研究の整理を進めているが、臨床心理学分野の学術誌等で公表された論文少ないようであり、医学および看護学分野に範囲を広げて収集して分析を行っている。先行研究の分析結果については、平成27年度内に公表できるようにしたいと考えている。2.については、1.の内容を踏まえながら、質問紙およびインタビューガイドの内容について検討している。3.については、臨床心理士としての経験が豊富な協力者を選出しているが、さらに数名の協力者を募る予定である。そして、協力してもらう内容と方法についての調整も同時に行っていく。4.については、正式な依頼はこれから行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
先行研究の収集と分析に時間を要し、質問紙およびインタビューガイドの作成が遅れている。さらに、研究代表者の所属研究機関の異動に伴い、調査協力を依頼する施設の選出の見直し、異動先の所属研究機関の規定にのっとって倫理審査の受審手続きを進める必要性がでてきた。そのため、平成27年度4月より患者および臨床心理士への質問紙並びにインタビュー調査を実施することが難しくなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の動向は明らかにされていないが、海外の報告によると、移植を受けた患者の自殺および事故死の割合は、一般の人口と比べて高いと言われている(Tichelli A.et al.,2013)。したがって、積極的かつ継続的に移植患者の心を支える体制を整えることが重要であると考える。移植患者の抱える不安や抑うつ、実存性など心理的諸問題について、国内では10名以下の対象者へのインタビュー調査を行い検討している研究が大半であるが、海外では数十~数百人の対象者に様々な尺度(自記式)を用いて調査・分析している研究が多いようである。日本における移植患者の心理をより的確に理解したうえで、臨床心理士が専門的立場で提供する支援の在り方を見出すために、国内外の先行研究の内容を踏まえつつ、臨床心理学において有用な結果が得られるような質問紙(既存の心理尺度を含む)やインタビューガイドなどを用いて調査を実施していく。 平成27年度は、移植を実施している施設に調査協力を依頼し、研究代表者の所属研究機関並びに調査協力施設の倫理審査の受審手続きを早急に進めていく予定である。
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