2014 Fiscal Year Research-status Report
成人期の自閉症スペクトラムにおける視覚的認知の特異性に関する神経心理学的検討
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26590163
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
松永 しのぶ 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (50300033)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 絵画完成課題 / 埋没図形課題 / 心理アセスメント / 弱い中枢性統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)の「部分」と「全体」の関係性認知の特異性を解明するために、成人期のASDを対象に「埋没図形課題」(embedded figures test:EFT)、「絵画完成課題」(picture completion test:PCT)遂行中の視線運動パターンを注視点追跡システム(アイトラッカー)により測定し、定型発達者と比較した時のASDの視線運動パターンの特異性を解明すること、「部分」と「全体」の関係性認知に関連する視覚的認知の特性からみたASDのサブタイプを検討することである。 2014年度は、使用する実験課題について検討した。PCTについては、PCT遂行に必要な認知処理方略のタイプも考慮したオリジナルの臨床研究用PCTを作成した。独自に考案した臨床研究用のPCT候補図版37枚を大学生45名に実施した。各図版の通過率および主成分分析の結果から候補図版は、「部分処理」‐「全体処理」、「知識依存」-「推論依存」の軸からとらえることができ、3つのサブタイプにグループ化することができた。各タイプはPCT遂行に関わる認知処理のタイプと関連することが示唆された。主な結果については、日本発達心理学会第26回大会で発表した。EFTについては、EFTを用いた国内外の先行研究を整理し、本研究で用いる実験用EFTについての検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いくつかのサブタイプを含むオリジナルの臨床研究用PCTを作成できたことは、ASD の認知処理プロセスを検討する上で重要な成果である。EFTの検討については、先行研究検討の結果、注視点追跡システムに課題を適用するためには、より丁寧な吟味が必要であることが明らかになったため、次年度への継続検討となった。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究用PCTとEFT課題の図版を注視点追跡システムで利用できるように調整、改訂する。定型発達の成人を対象に予備実験を行い、実験手続きの調整を行った後、ASD、定型発達の成人を対象にEFT、臨床研究用PCTの課題遂行中の注視時間、注視部位を測定し、ASDと定型発達の相違を検討する。さらにASDグループ内での臨床研究用PCTの成績、視線運動のパターンについて解析し、視覚的認知の特性からみたASDのサブタイプ分けについて検討する。
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Causes of Carryover |
注視点追跡システム(アイトラッカー)での予備実験実施を2015年度に変更したため、予備実験参加者への謝金や実験に関わる物品費の支出が翌年度に繰り越されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験参加者への謝金および実験に関わる物品費に使用する予定である。
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