2014 Fiscal Year Research-status Report
心拍変動バイオフィードバックは抑うつ的認知処理を調整するか
Project/Area Number |
26590168
|
Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
榊原 雅人 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (10221996)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 心拍変動バイオフィードバック / 抑うつ / ネガティブバイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、抑うつ傾向を示す者において認知的ネガティブバイアスが示されるかどうかを明らかにする目的で以下のような実験を実施した。大学生19名を対象とし(このうち2名は脳波へのアーチファクトの混入が多く除外)、抑うつ尺度によって高抑うつ群8名と低抑うつ群9名に分類した。実験では、幾何学図形(三角形と菱形、五角形、六角形の4種)と漢字二字熟語(ネガティブ語:苦痛、最悪、失望、絶望、崩壊; ポジティブ語5種: 活躍、幸福、最高、充実、勝利; およびニュートラル語: 人類、台本、道路、模型、来週など)を重ね書きしたものを準備した。参加者には、図形と同時に呈示される漢字二字熟語の意味や感情価に関わらず、菱形パターンに対してできるだけ速く正確にボタンを押すように教示した。この際、脳波は両耳朶連結を基準として正中線上3部位(Fz・Cz・Pz)から記録した。刺激に対し正しく反応した試行につきERP波形(P300成分)を求め、感情語(ネガティブ、ポジティブ)と中性語(ニュートラル)に分類して結果を比較した。ネガティブ語とニュートラル語の比較、ポジティブ語とニュートラル語の比較をP300振幅(Pzの450-600ms区間電位)について行ったところ、低抑うつ群はネガティブ語に対し大きくニュートラル語に対して小さかった。一方、高抑うつ群は刺激の感情価に関係なく増大する傾向にあった。従来、P300成分の振幅は刺激の処理資源を反映するとされていることから、高抑うつ者では課題そのものの取り組みへの心的負荷が高く、どのような種類の刺激語に対しても認知的な処理資源を多く投入していることが明らかになった。この結果は、第33回日本生理心理学会大会にて発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の検討結果を受け、さらに追加的な実験をいくつか実施した結果、呈示する刺激に幾何学図形を組み合わせる必要はなく、1)文字刺激そのものをターゲットとすること、2)文字刺激の呈示頻度を約30%程度(それに対し単純な図形は70%程度)とする操作によって、ネガティブ語とニュートラル語のコントラストがより明瞭に検出できる可能性のあることがわかった。この事実をもとに、現在までに呈示刺激の再構成を完了した。今後、この刺激セットをもとに高抑うつ者および低抑うつ者の差を検討し、抑うつ者における認知的ネガティブバイアスを検出することとなる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は二つの段階を予定している。はじめに、現在、準備されている刺激をもとに、高抑うつ者と低抑うつ者のコントラストを検出し、抑うつ者に特有なネガティブバイアスをERP(P300)によって明確にする。次の段階では、実験参加者を高抑うつ者に限定した上で、心拍変動バイオフィードバック法を実施する条件群とバイオフィードバック効果を発揮しない条件群を設定する。第一段階で実施した課題を両者に実施したとき、心拍変動バイオフィードバック群にネガティブバイアスを抑制する効果(ネガティブ刺激に対するP300成分の調整的変化)が現れるかどうかを検討する。
|