2015 Fiscal Year Research-status Report
対属性仮説に基づく結合問題の解決と多次元情報統合過程のモデル化
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26590173
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森田 昌彦 筑波大学, システム情報系, 教授 (00222349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 ひろみ 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (00359580)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 視覚特徴統 / 対属性モデル / 刺激反応学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間はさまざまな情報から総合的に認知や判断を行うが,その過程をよく反映する一般的な数理モデルは知られていない.その根本には,「脳において異種情報がどのように統合され,それがどう処理されて認識や行動に至るのか」という結合問題が未解決であるという状況がある.本研究では,我々が提唱した「視覚的物体の認識や記憶は,色・形・動きなどの属性を2つずつ統合した複数の表現に基づいて行われる」という対属性仮説の妥当性を実験的に実証すると共に,その一般化を図る.これらを通じて結合問題の理論的困難さを解決すると共に,人間の情報統合過程を反映した多次元情報統合の数理モデルを構築することを目的にしている. 平成27年度は,26年度に引き続き視覚特徴統合における対属性仮説の検証を行った.まず,3属性を含んだ刺激と反応の連合学習の実験において,異なる属性を別々の窓に表示すると反応選択時間が長くなった一方で,2属性ずつ組み合わせて3つの窓に提示したときには有意な差は出なかった.また,提示方法に関係なく,3属性で決定する反応の方が2属性だけで決定する反応よりも学習と実行が共に難しかった.後者の結果は,3属性うち「模様」を「位置」に変えても変わらなかった. 以上の結果は,全属性を統合した物体表現ではなく,注意によって2属性ずつが結合した表現が反応と連合されるという対属性モデルを支持するとともに,それが属性の種類によらない普遍的な性質であることを示唆する.これらの成果は,国際会議で発表した. そのほか,対属性仮説に基づいた価値判断の数理モデルの妥当性を検証するために,服装のカラーコーディネートに関する実験を行った(現在結果の分析中).また,これをパターン識別や強化学習に応用した研究について国際雑誌に論文を発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚特徴統合に関する対属性仮説を支持する証拠が積み重ねられつつあり,既に成果の一部は高インパクトファクター(5.578)の学術誌に掲載済みである.その後の成果も国際会議で発表するなど,順調に進展している.応用研究に関しても,学術論文3編お よび国際会議論文1編という十分な成果を挙げた.ただし,目標である結合問題の最終的な解決にはまだ至っておらず,人間の多次元情報統合の数理モデルの構築も不完全である.
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ順調に進展しているので,今後もこのまま研究を進めていく予定であるが,挑戦的萌芽研究の趣旨も踏まえて,新たな研究の展開も図っていきたい.
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Causes of Carryover |
シンガポールでの学会発表のための旅費の一部について,大学(研究科)からの補助が得られ,その分本年度の使用額が予定より減少したため,未使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額全額を,次年度,心理実験用の物品費として使用する予定である.
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