2015 Fiscal Year Annual Research Report
ラットの検索誘導性忘却に関わる神経メカニズムの解明
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26590174
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
一谷 幸男 筑波大学, 人間系, 教授 (80176289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 一夫 筑波大学, 人間系, 准教授 (30282312)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 検索誘導性忘却 / 自発的物体再認 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
検索誘導性忘却(retrieval-induced forgetting)とは,Andersonら(1994)によって報告された記憶の抑制現象の一つである。Andersonらは,関連する複数個の単語を同時に覚えた後に,そのうちの一部の単語のみを思い出す(検索)ことによって,残りの単語の再生率が低下する現象を見いだした。不要な記憶を抑制することは,必要な記憶をより強固にするための有効な手段であると考えられる。 前年度我々は,ラットの自発的物体再認課題を用いて,ヒトで見られる検索誘導性忘却現象を再現することに成功した。そこで本年度は,忘却を促すと想定している検索の直前に,記憶検索を障害することが知られているグルタミン酸NMDA受容体遮断薬のMK-801,あるいは同様に効果を持つアセチルコリン受容体遮断薬のスコポラミンを投与し,検索過程自体によってその後の忘却現象が誘発されているのかどうかを検討した。 被験体にはLong-Evans系雄ラットを用いた。自発的物体再認課題の見本期では,2つの異なる見本物体(A,B)をラットに自由に探索させた。見本期から60分後に行った検索期では,見本物体のうちのひとつ(B,B)を置き,ラットに再度探索させた。検索期の20分前に薬物を腹腔内投与した。検索期の120分後に行ったテスト期では,検索期で提示しなかった方の見本物体と新奇物体(A,C)をラットに提示し,各物体に対する探索時間を測定した。 結果として,統制群ではテスト期において見本物体と新奇物体を弁別できなかったのに対して,検索期の前にいずれかの薬物を投与されたラットは,テスト期において新奇物体(C)を弁別することができた。したがって,統制群に見られた忘却現象は,正常な検索過程の経験に起因することが示唆された。
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Research Products
(9 results)