2016 Fiscal Year Research-status Report
子育ての困難に直面する家族が形成する「承認とケアのネットワーク」に関する実証研究
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26590187
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
山田 哲也 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (10375214)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 家庭教育 / 自助グループ / 社会関係資本 / 承認とケアの社会学 / 社会的ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度には、第一に、不登校・ひきこもり当事者の家族が形成する自助グループに対する参与観察を実施した。具体的には東京都・大阪府で活動する親の会の定例会に参加し、参与観察を行うことで、「承認とケアのネットワーク」の典型的な事例を対象に、フィールドデータを入手した。親の会で形成される「承認とケアのネットワーク」は、「同じ悩みに直面した経験」を軸にした集合的なアイデンティティを形成することで、結束型の社会関係資本を基盤としつつ、他方で、会に参加するまでは接点のなかった人びとと「同様の経験」を媒介に接触する架橋的な社会関係を形成する働きを有していた。この点はすでにこれまでの調査で確認されたことであるが、親の会における「承認」「ケア」の宛先が、いま・この場を共有する人びとだけに限定されてはおらず、「今後、同様の困難に直面するかもしれない」、見知らぬ人びとに対しても拡張されてゆく諸相が明らかになった。さらに、親の会への参与観察に加え、生活困窮者世帯の子どもたちを対象に学習支援を行うNPOの活動を視察し、関係者を対象に聴き取りを行った。 第二に、2015年度に子どもの支援をミッションに掲げる全国のNPO32団体を対象に実施した質問紙調査のデータを分析し、単純集計を主とした報告書を作成、調査対象団体に送付した。分析をおこなった結果、学習支援活動に参加した子どもたちはそこでの経験を通じて社会関係資本と文化資本を形成し、そのことによって家庭的な背景(SocioEconomic Status:SES)に起因する格差が一定程度緩和される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では2016年度にWebモニターを利用した不登校に関する質問紙調査を実施する予定であったが、不登校経験のある子どもをもつモニターが予想以上に少なく、調査計画を立て直す必要が生じた。Web版調査を補完するために、不登校児家族の自助グループを対象にした質問紙調査の実施可能性を関係者と協議しつつ模索したために、不登校に関する調査の実施時期を次年度に繰り越すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度にWebモニターを利用した調査を実施し、可能であればこの調査と比較可能な質問を盛り込んだ質問紙調査を不登校児家族の自助グループを対象に実施する。そのうえで、これまでの調査で得られたデータをもとに研究成果をまとめ、論文として投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では2016年度にWebモニターを対象とした不登校に関する質問紙調査を実施予定であったが、不登校経験のある子どもをもつモニターが少なく、Web版調査に加え、同調査と比較可能な質問紙調査を不登校児家族の自助グループに対しても行うよう計画を変更した。そのため調査協力予定団体に対する事前折衝に時間を要し、先方の調査協力可能時期との兼ね合いで、次年度まで事業期間を延長する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Webモニター調査と質問紙調査を実施し、収集したデータを分析するために支弁する予定である。必要が生じた際にはフォローアップの聴き取り調査を実施する可能性があり、その場合には旅費等も支出する。
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[Book] 現代社会の児童生徒指導2017
Author(s)
古賀正義・山田哲也・金子真理子・田中理絵
Total Pages
321(28-45,113-134,149-168,208-220,258-275)
Publisher
放送大学教育振興会