2015 Fiscal Year Research-status Report
発見史料による昭和戦前期国定国語教科書編纂過程の研究
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26590232
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
安 直哉 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30230204)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国語教育史 / 国定国語教科書 / 小学国語読本 |
Outline of Annual Research Achievements |
1837(昭和12)年に発行された国定第四期国語教科書『小学国語読本尋常科用巻九』の第17課に「図書館」という教材が掲載された。これは、図書館界の永年の願いだった。早くには1919(大正8)年4月に開催された第14回全国図書館大会において議決された文部大臣宛答申案に、次のような項目が登場している。 三、尋常小學第六學年國語讀本中に圖書館に關する一課を加ふること。 このように約20年に及ぶ悲願の達成であった。 2012(平成24)年7月、筆者は東京都内の、とある古書店で、「文部省図書局編集(ママ)課長旧蔵小学校教科書編集資料 昭和初期~戦前」と銘打たれた古文書一式を購入した。この古文書資料一式を精査したところ、青木存義、藤岡継平、藤本萬治、大岡保三と、昭和3年頃から昭和14年頃までの歴代の文部省図書局編修課長間で引き継がれ、保持されてきた文書群であることが分かった。この中に、『小学国語読本尋常科用巻九』第17課「図書館」の教材文原案等、その編纂過程が分かる資料が複数含まれていた。それらの資料を紹介するとともに、考察を加えた。そして、今まで知られることがなかったところの、帝国図書館と文部省図書局編修課との間で遣り取りの行われていた教材「図書館」の編纂過程を解明した。そうした作業を経て最終的には、『小学国語読本』が内包した表現傾向の一端を明示することができた。 帝国図書館が提出してきた教材文原案は、教科書教材として使えるものではなかった。出版された『小学国語読本尋常科用巻九』においては、帝国図書館の原案は換骨奪胎されて、まったく別物とも言える教材文が掲載された。帝国図書館原案と教科書本文との「差」を埋めたのは、「『小学国語読本』流ロマンチシズム」とも称することができる文学表現だったのである。このロマンチシズムこそが、『小学国語読本』の一大特色となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究課題の2年目にあたる。1933(昭和8)年度から年次進行で出版された国定第四期国語教科書『小学国語読本尋常科用』のうち、「巻九」第17課「図書館」という教材について、編纂過程を解明した。この編纂過程については、本研究課題遂行の中心資料となる、申請者が発見した新史料を解読することで初めて明らかになったものである。当初の目的通り、国定第四期国語教科書の編纂過程を着実に解明しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2016(平成28)年度は、本研究課題の最終年度となる。今後は、国定第四期国語教科書『小学国語読本尋常科用』(通称、サクラ読本)の編纂に係る、全体像の解明にむけて、研究を遂行していきたい。
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Causes of Carryover |
パソコンを購入することになっているが、その購入が次年度になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
パソコンの標準使用年限が過ぎるので、パソコンを購入する。またそれに伴って周辺機器も購入する。また、論文制作のための資料として、国語教育関係図書を購入する。
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Research Products
(1 results)