2015 Fiscal Year Research-status Report
教科固有の資質や能力の育成を目指すドイツ中等歴史の教育課程の研究
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26590245
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
村瀬 正幸 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (90641572)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教育学 / 社会科教育 / 歴史教育 / 中等教育 / コンピテンツ / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目の本年度は、当初研究最終年度(平成28年度)に予定していた、ドイツ在住歴史教育者を日本に招聘して行う日独歴史教育実践者会議(日独歴史教育シンポジウム)を、被招聘者の都合により開催した。内容は、①ALを取り入れた歴史授業作り(個人発表)、②戦後ドイツの歴史教育(被招聘者)、③日本の教育改革とドイツ(研究代表者による成果報告)、④歴史教育でどんな資質・能力を育成するか(シンポジウム)である。このシンポジウムの内容を踏まえ、次の2点を成果として報告する。まず、ドイツBW州の現行教育スタンダード(2004に基づくもの)、同ギムナジウムの教育課程と同「歴史」の基準調査から明らかになった特色は、①「人格の発達」という教育目標のもとに、能力やスキルが位置付けられ、学校の使命と時代の要請との調和が目指されていること、そのために、②教科・科目で習得すべき知識・能力を教科横断的に育成すべき資質・能力と関連付けて整理していること、③それらとの関わりで歴史教師の授業作りに関わるマネジメント能力を高めるための具体的な指針を提供していること、である。次に、同ギムナジウムで参観した歴史授業の特色については、①生徒の発表、教師と生徒との問答、資料を活用した問いの考察、生徒同士の意見交換、生徒個人の省察の機会をねらいに即していくつか組み合わせていること、②生徒の学習状況を診断的に評価するためのいくつかの小さな問いを発してみて、教師が想定した問いが生徒自身の問いとなるように当初の問いを授業の中で組み替えていること、③歴史の見方や考え方を吟味する際に、できるだけ過去と現代とを往還する問いを発し、歴史を学ぶ意義を実感できるように工夫していること、である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、最終年度(平成28年度)に当初予定していたドイツ在住歴史教育者を日本に招聘して行う日独歴史教育実践者会議(日独歴史教育シンポジウム)を、被招聘者の都合により開催することとした。その際、被招聘者から、平成28年度からドイツBW州ギムナジウムで新しく始まる新教育課程の動向に関する情報とその草稿を入手することができ、その概要の一部を同シンポジウムで公開することができた。また、昨年度からの実地調査で収集した歴史授業を整理し、同シンポジウムだけでなく、各種講演会や教育系雑誌に連載・掲載することができた。よって、おおむね順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、昨年度に日独歴史教育実践者会議(日独歴史教育シンポジウム)を開催することができたため、新教育課程の調査を引き続き継続する。新旧教育課程の比較をしながら、ドイツBW州の新教育課程の特色を整理する。また、昨年度から教育系雑誌に連載している「資質・能力の育成と世界史学習」を継続し、教育課程や歴史授業紹介に続き、アビトゥアの試験内容を分析紹介する。年度末にはこれまでの成果をまとめ、各種講演会や教育系雑誌などに掲載して成果を発信し、今回の研究成果を総括する。
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Causes of Carryover |
当初、年度末にドイツBW州のギムナジウムの実地調査を予定していたが、実地調査先との調整ができず、そのために次年度に繰り越すこととした。渡航等にかかる費用として、次年度に使用することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度(研究最終年度)、早い時期に実地調査先との調査日の調整を行い、適切な時期に調査できるように準備を始める。本年度、ドイツBW州では新教育課程に移行することもあり、学校現場への周知状況にも配慮して、調査計画を練り直す予定である。渡航や情報収集のための費用として活用する。
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