2016 Fiscal Year Research-status Report
教科固有の資質や能力の育成を目指すドイツ中等歴史の教育課程の研究
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26590245
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
村瀬 正幸 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (90641572)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教育学 / 社会科教育 / 歴史教育 / 中等教育 / コンピテンツ / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目の本年度の研究は、バーデンヴュルテンベルク州(ドイツ)において新しくスタートしたレアプラン(2016年改訂)の記述内容と2004年版レアプランとの比較を行い、資質・能力ベースの教育課程の改訂状況を調査すること、それに伴って、ギムナジウムやレアルシューレの授業内容の改善の方向性を実地に調査することなどを目標に取り組んだ。次の諸点を今年度の研究成果として報告する。①資質・能力ベースの教育課程の編成原理を一層明確にした改訂が行われたこと、②それに対する教師の意識は高く、その編成原理を授業に実体化するための授業改善が試行されていることである。まず①については、歴史の教育内容ごとに学習の到達度が規定され評価の観点が一層明確化したこと、具体的には、行動指示動詞(オペレーター)を掲げ、歴史について議論する、歴史を評価する、事象を比較することなどの意味を概念的に規定し、生徒の学習状況を公正に評価する指標が示されたことが特徴としてあげられる。これは、指導と評価の一体化を図るための教育課程上の工夫として評価できる。②については、レアルシューレの歴史校外学習(フランスの強制収容所の実地調査)、ギムナジウムにおける歴史授業を参観し、生徒が自ら発した課題意識を拠り所に、生徒が探究する歴史授業のための工夫がなされていることが分かった。具体的には、教室における歴史の学習事項が、社会の中ではどのように記録として残され、どんな記憶の再現を人々に求めているかなどを生徒に考察させる、歴史の知識を生かす取り組みが実践されていたことが特徴的である。新しいレアプランと連動して学校現場における授業改善が進められていることが実地調査で把握できた。年度末には、さらに詳細な実地調査を行った。そこで収集した調査資料を整理・まとめるために、1年の延長が認められ、次年度研究をまとめることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バーデンヴュルテンベルク州(ドイツ)の新しい教育課程の特徴を、旧教育課程と比較して明確にできたこと、これまでの歴史授業の実地調査がギムナジウムに限定されていたが、レアルシューレの歴史授業の実地調査も行えたこと、また、州立の教員養成所や教員研修所を訪問し、教員養成と教員研修を一体的に把握するための手掛かりを得たこと、それらの成果は、中等教育従事者向けの雑誌や講師として参加した各種教員研修の取組において広く公開し、日本の教育課程改訂の動向と関連付けながら紹介できたことなどから、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、1年の延長申請が認められ、3月末の実地調査で収集した資料の整理・まとめを中心に行う。州政府のレアプラン、学校における探究系の歴史授業、教員養成や教員研修を一体的にとらえ、教育課程の構造的な改革を進めているドイツの試みを報告する。
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Causes of Carryover |
1年の延長申請が認められ、これまでに収集した諸資料の翻訳や整理、文献、調査に必要な諸物品(消耗品)などの費用に充てるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
収集した諸資料の翻訳や整理、写真等の図版の処理と整理、文献などの翻訳などの費用として使用する予定である。
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