2014 Fiscal Year Research-status Report
知識観の特長を生かした社会系教科目の指導と評価の改善に関する研究
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26590247
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
大杉 昭英 国立教育政策研究所, 初等中等教育研究部, 部長 (50353397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二井 正浩 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター基礎研究部, 総括研究官 (20353378)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 知識観 / 授業構成 / 学習指導 / 学習評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
文献研究に基づき社会構成主義には二つの立場に分類できることを明らかにした。すなわち,ありとあらゆる存在を全て人々による社会的構成活動の所産とみなす「強い」バージョンと,様々な現象のうちごく一部を構成されたものと考える「弱い」バージョンの二つの考え方である。本研究では「弱い」バージョンの構成主義に立ち,未確定なもの以外は客観的な事実としてとらえ,それを前提として未確定のものを構成する考えに立つことにした。 そして,知識観の整理に基づき,社会系教科目で「弱い」バージョンの構成主義に立って授業構成を行っている模擬裁判を取り上げ分析を行った。模擬裁判では客観的な事実としての証拠に基づいて,未確定の事実(犯罪)の認定を行う行為が社会的構成に当たることをまとめ,法と教育学会の基調講演で発表した。 また,知識観の整理に基づいて,模擬裁判の特長を明らかにし,法と教育学会で発表した内容をまとめて論文を作成し『自由と正義』に投稿・掲載された。 さらに,オーストラリアのACARA(AUSTRALIAN CURRICULUM,ASSESSMENT AND REPORTING AUTHORITY)を訪問し,ゼネラルマネージャーと社会系教科担当者に対してインタビューを行った。そして,オーストラリアでは生徒の資質・能力としてケーパビリティの育成を図り,その能力を用いて知識を構成する授業づくりを行おうとしていると調査結果にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は,科学哲学の成果を基に社会系教科目を担当する教師が持っている知識観について考察し,知識観の特長を生かした授業開発を行うことにある。 そのたため,平成26年度の研究実施計画では,前期に研究の基盤となる分析枠組みと知識観の整理を行うとともに,後期に海外調査を実施する計画を立てていた。 分析枠組みと知識観の整理については,社会構成主義的な知識観をまとめ,それを基に模擬裁判授業を分析した,そして,その成果を学会で発表するとともに論文を作成し,それが『自由と正義』に掲載された。 また,後期には海外調査(オーストラリア)を行った。オーストラリアでは,社会構成主義に基づくカリキュラム構成を考えていると思われるACARA(AUSTRALIAN CURRICULUM,ASSESSMENT AND REPORTING AUTHORITY)を訪問し,インタビュー調査を行った。そして,能力を育成し,知識を構成していくためのカリキュラムについて知見を得ることができ,日本の社会系教科目における授業構成のヒントを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度前期は,平成26年度に引き続き科学哲学の成果を基に社会系教科目を担当する教師が持っている知識観を考察し,社会構成主義と考え方が異なる実在論の考え方と社会系教科目の授業づくりとの関係性を明らかにする。そして,平成26年度に明らかにした社会構成主義の知識観と本年度検討する実在論に基づく知識観を基本にして,社会系教科目担当の教師がどのような知識観を持つのかを調査するインタビュー項目を作成する。 後期には,海外調査を行い,社会構成主義と実在論の立場からどのような知識観に基づいて授業が構成・実施されているのか,また,それはどのようなカリキュラムの下で行われているのかを調査するとともに,使用される教科書や教材等について収集を行う。さらに,日本の社会系教科目担当の教師が実施する授業との比較を行い,その特色を明らかにする。また,前期に作成した教師へのインタビュー項目を完成させ,国内で実態調査を実施する。
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Causes of Carryover |
昨年度は後期の海外調査を3月9日から15日に実施することにしたため,予算の執行が遅れた。また,円安が進み海外調査費用が増加すると懸念したため,前期の予算執行を押さえた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は,研究計画に従って海外調査を行うとともに,国内において社会系教科目担当の教師に対するインタビュー調査と授業視察のための旅費への支出を増やす。 また,授業視察において映像記録や録音のための機器購入を行うために物品費の支出を増やす。
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Research Products
(2 results)