2014 Fiscal Year Research-status Report
知能検査が測定する心的過程を実証し,検査の有用性を高める研究
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26590252
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大六 一志 筑波大学, 人間系, 教授 (10251323)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 知能検査 / WISC-IV / 自閉スペクトラム症 |
Outline of Annual Research Achievements |
WISC-IV知能検査は,日本で最もよく使われている学齢期の知能検査で,15の下位検査における得点の高低に基づき受検者の能力特性を理解する。この検査による理解を充実させるために,本研究ではいくつかのエビデンスを得ることを目的としている。すなわち,(1)下位検査「絵の概念」が自閉スペクトラム症児における意味理解の困難や,暗黙の意味的ルール理解の困難と相関するかどうか,(2)「符号」においてプランニングやモチベーション,視覚機能の要因を分離することが可能かどうか,(3)基準となる他検査,特に田中ビネー知能検査との関係である。 平成26年度は前者の(1)(3)について検討した。このうち(1)については通常の学級に在籍する9~15歳の自閉スペクトラム症児12名,および定型発達児14名を対象に,WISC-IV知能検査を実施した。「絵の概念」については,通常の実施とは別に,対象児が理解した意味の内容について問う質問を追加して実施した。その結果,「絵の概念」について両群の間には得点の顕著な差は見られなかった。これはWISC-IVの理論・解釈マニュアルに掲載されている米国版のデータとは異なる結果であり,自閉スペクトラム症児が「絵の概念」を苦手とするという結果は必ずしも頑健ではないことが示唆された。 ただし,次のような特徴が観察された。すなわち,定型発達児では,意味の内容について問われることにより正答が増え,得点の上昇がみられたのに対し,自閉スペクトラム症児では正答が増えることはなく,得点は上昇しなかった。このことから,定型発達児では直観的・視覚的な意味理解と言語化された意味とを有機的に結びつけることが可能であるのに対し,自閉スペクトラム症児では直観的・視覚的な意味理解と言語化された意味とを自発的に結びつけることはないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は2番目の課題である「符号」下位検査の研究を先に行いたいところであったが,視線計測装置の選定に時間を要したため,「絵の概念」の研究を先に行うことになった。また,「絵の概念」の研究については一応の結論の方向性は得ているが,自閉スペクトラム症児についてはいくつかのグループに分けて特徴を検討する必要性が考えられるため,対象児を数人追加する必要があると考えている。そのため,予定よりは若干遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で述べた通り,「絵の概念」については若干の対象児を追加し,自閉スペクトラム症児をその特徴によっていくつかのグループに分けた検討を行う。また,「符号」については計画に従い,得点の事前予測や目標設定,眼球運動の計測などを実施し,プランニングやモチベーション,視覚機能の影響を検討する。
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