2015 Fiscal Year Research-status Report
ノーマライゼーション理念に代わる調和理論の構築に向けた萌芽的研究
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26590255
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
眞城 知己 千葉大学, 教育学部, 教授 (00243345)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インクルーシヴ教育 / ノーマライゼーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、26年度の研究により、ノーマライゼーション理念とインクルーシヴ教育概念についての不十分な理解状況が浮かび上がってきたことを踏まえ、我が国における新しい理念を構築するためにはこの点についての検討がまず必要であると考え、そこに焦点を当てた調査を実施した。のべ320名を対象にし、インクルーシヴ教育概念についてのイメージの概念構造を明らかにする調査、及びインクルーシヴ教育概念とノーマライゼーション理念の関係性の構造を明らかにする調査を実施した。 その結果、およそ以下のような点が明らかとなった。1)日本においては、障害者権利条約の批准を踏まえて、「インクルーシブ教育システム」の構築が通常学校に重要な役割をおいて構想されていることを念頭に、通常学校教師と特別支援学校教師の理解の相違を比較した分析を行ったところ、通常学校教師は「通級指導」がインクルーシヴ教育を象徴するイメージとして理解しているのに対して、特別支援学校教師は「分離された学習機会の否定」を同概念を象徴するイメージとして捉えている特徴が明らかとなった。2)インクルーシヴ教育概念に対するイメージの特徴を詳細に分析したところ、理解構造の特徴から6タイプに分類することができたが、概念を正確に理解できている教師がとても少ない結果も明らかとなった。3)こうしたインクルーシヴ教育概念の不正確な理解状況は、ノーマライゼーション理念のとらえ方に関係すると考え、両者のイメージの関係性を明らかにする調査を行ったところ、ノーマライゼーション理念に対して肯定的なイメージを有している教師は「通級指導」をインクルーシヴ教育の具体像として想定している一方、ノーマラーぜーション理念について社会的に派手なイメージを有する教員は、分離された学習機会を強く否定する傾向があることなどが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画に沿って調査や国内外の研究者との討議を行うことができた。異なる3つの国際会議において、インクルーシヴ教育分野において世界的に著名なAinscow教授と直接協議を行ったことをはじめ、同様にイギリスでもっとも著名な障害児教育及びインクルーシヴ教育理論の研究者であるHegarty教授と共同でワークショップを行うなど、今後の新しい理念の開発に向けた協議を重ねることができた点が、本年度の一番の成果であった。 一方で、日本における教員を対象にした調査から、我が国においてインクルーシヴ教育及びノーマライゼーション理念の理解が予想を超えて不正確であることが明らかになったことから、新たな固有の概念を導入する必要性が生じた。現在、この点に関する検討を続けているところであるが、本研究で目指す調査理念に係わる概念の明確化のために、さらに調査を重ねる必要性が生じてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はないが、調和理念の開発のために必要な概念要素を明確にすることに集中的に検討点を設定することが欠かせないと考えられることから、28年度には、この点に関する検討を中心に行うことが必要であると考えている。
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Causes of Carryover |
当初の計画通りの使用額である
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は、国際学会(8月: International Education Conference in San Francisco)において成果発表を行うとともに、Ainscow教授ら最先端研究者との協議の機会を設定する予定である。
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