2014 Fiscal Year Research-status Report
ライフコース・アプローチによる知的障害者の生涯発達支援に関する縦断的・質的研究
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26590263
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
平井 威 明星大学, 教育学部, 准教授 (50633278)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 知的障害者 / 地域生活 / ライフコース / 生活構造 / 生涯発達 / 生涯学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、知的障害者のライフコースに関する現状把握と質的調査のための予備調査にあてた。3名のサンプル調査を行った。しかし、調査は思いの他時間がかかり、一人のサンプル(A氏)については、当初計画に近い成果が得られたが他の2名(B氏、C氏)については、十分な資料が収集できなかった。またこの過程で「ライフストーリー分析」の手法も加味した研究が必要であることがわかった。さらに調査対象者を発掘する過程で長崎県の先進的なライフコース支援事例を調査する機会を得た。インタビュー取材とともに質問紙による横断的調査も実施した。 本研究の方法的特徴は、単に当事者・家族へのインタビュー、質問紙等による「現時点での語り」収集だけでなく、療育記録や学校の指導記録、指導計画書、作品、福祉機関の支援記録等の「過去から現在までのポートフォリオ」収集を行うことによって、当事者一人一人の成育史を多角的立体的に描き出すことにある。この研究デザインが予想以上の労力を要するものであることに改めて気づかされた。しかしこの研究は、「障害者一人一人のニーズに対応してライフサイクルの全段階を通じ総合的かつ適切な支援」(障害者基本計画)を前進させることに貢献できると確信する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.知的障害者のライフコースに関する現状把握(文献研究および調査研究)については、我が国戦後史における知的障害者の生涯発達と学習の支援に関する変遷と現況に関して一定の理解を得ることができた。成人知的障害者に対する生涯学習支援の現状に関する実地調査は、実施できなかった。 2.質的調査のための予備調査(取材調査研究)は、養護学校義務制以前世代(54歳)のA氏と同年齢のB氏、養護学校高等部進学世代(40歳)C氏に対する面接取材(聞き取り、ポートフォリオ収集等)を行った。 3.当初予定になかった長崎県の社会福祉法人南高愛隣会結婚推進室「ぶ~け」共同研究プロジェクトを立ち上げ、交際・結婚・子育て支援を受けている知的障害者も調査対象者に加えて、質問紙調査とインタビュー取材を行った。 4.当事者、家族、支援者へのインタビューとこれまでの指導・支援履歴ポートフォリオなどの資料を総合して作成するサンプルによる「知的障害者の成育史」を描くことは、インタビュー素材の解析や整理に殊の外時間がかかり、当初計画通り進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.知的障害者のライフコース調査(本調査) 「質的調査のための予備調査」で明らかになった調査方法の見直しを踏まえ、成人知的障害者と家族、支援者への取材(面接およびポートフォリオ収集等)調査を行う。その後、取材結果の2次データ化-テープ起こしや要約、生活史年表の作成等を経て、被取材者個々の「成育史」を作成する 2.成人知的障害者の乳幼児期から現在までの療育、教育、福祉、労働、生涯学習などの経歴をたどり、それぞれの時期における当事者と家族の様子や支援成果を分析する。 そのうえで、知的障害者のライフコースの特徴と、青年期-成人期課題(変化の指標)との関連を考察し、豊かな人生のために必要な生涯発達と学習の支援はどうあるべきか明らかにしたい。その際、質的調査データだけでなく、質問紙調査等で収集した横断的数的データも必要に応じて活用する。
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Causes of Carryover |
平成26年12月段階で物品費、人件費・謝金等が当初予算より超過していたことと、当初計画になかった2月に出張調査を行う関係で、20万円の前倒し支払請求を行った。 このため、全体としては当初90万円を予定していた当該年度所要額が、110万円に増えたが、27年1月以降3月末までに実際に使用した額は、旅費交通費や宿泊費を安く上げる努力によって20万円を下回ったため、全体として1,038,795円となり、61,205円を余らせてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年目の当初使用計画に組み込み、特に予想以上に手間暇のかかるインタビューテープ反訳のための人件費に充てる。
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