2014 Fiscal Year Research-status Report
オリゴロイシン型糖脂質の階層構造特性を利用した新規ナノコーティング法の創出
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26600003
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 哲弘 千葉大学, 教育学部, 教授 (40182547)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 表面処理剤 / パーフルオロアルキル化合物 / オリゴロイシン誘導体 / 平行β-シート構造 / 分子ジッパー / ロイシンファスナー / 糖脂質 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,水素結合と分子ジッパーで形成された二次元稠密構造を,糖基の接着力で基材に固定することによるナノコーティングを実現するのが目的である。そのため,①オリゴロイシン型糖脂質の合成,②フィルム中の分子配向解析,③コーティング方法・条件の確立が研究を構成する3本の柱である。①では,撥水・撥油・低摩擦の特性を備えたパーフルオロアルキル鎖を導入したオリゴロイシン型糖脂質の合成に力点を置く。②では,二次元稠密構造の根幹である水素結合と分子ジッパーの検出を主目的とし,優れた表面処理効果と稠密構造形成の相関を実証する。③では,二次元稠密構造を維持したコーティング法の開発を行うが,特に糖基と基材の間に働く相互作用を分光学的に検討する。 上の研究目的に鑑み,本年度は糖鎖を親水基,パーフルオロアルキル鎖を疎水基とするヘキサロイン誘導体(D-glu-Leu6OC2C8F)を合成し,単分子膜の表面形態観察を行ってコーティング剤としての可能性を検討した。この分子は糖基による接着効果に加え,ヘキサロイシン基による水素結合-分子ジッパー階層構造形成で二次元稠密性,パーフルオロアルキル基で撥水・撥油性や防汚性を期待した構造になっている。 観察の結果,D-glu-Leu6O-C2C8Fの表面形態は海島構造であル事が明らかになった。島の部分は微結晶に相当すると考えられ,ヘキサロイシン基が結晶性を向上させた結果,気水界面に試料溶液を展開した後,溶媒の蒸発過程で部分的な結晶化が進行したと推察される。オリゴロイシン基を有する両親媒性分子は,親水基にグルコン酸を有するとき,アンモニウム基やカルボキシ基を親水基とする分子よりも防錆能力に優れていた事から,グルコン酸基は基板に対する分子の吸着に寄与することがわかったが,ロイシンの連鎖数が多すぎると,広範囲にわたる稠密な分子配列が形成されにくくなる事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単分子膜の表面形態は,欠陥の多い海島構造であった。この海島構造は,オリゴロイシン基中のロイシン残基数が6個になると,結晶化しやすくなることが原因と考えられる。そこで,オリゴロイシン中のロイシン残基数を3~4個程度にしたロイシン誘導体を合成し,再度表面形態を観察しなければならないが,ロイシン数を減じた分子の合成はロイシン数が多い分子よりも容易である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,パーフルオロアルキル基を疎水基として利用する。ところが,平成26年度,研究協力者がパーフルオロアルキル鎖が示す,撥水・撥油性などのマクロ物性がアルキル鎖中の炭素数によって変化することを見出し,「パーフルオロアルキル鎖の双極子アレイ」と言う観点から報告した。この理論によれば,パーフルオロアルキル鎖は,鎖長によってマクロ物性に与える効果が異なる事になり,本研究で用いるパーフルオロアルキル鎖についても鎖長効果を調べる必要がある。このため,平成27年度には「パーフルオロアルキル鎖の双極子アレイ」に関する研究を新たに加える。それ以外については,計画書に沿って研究を遂行する予定であるが,糖鎖の接着効果をより明確にするため,糖基と同様に水酸基を多数有する,トリスヒドロキシアミノメタンを親水基とする分子を新たに合成し,その接着効果を糖基と比較する実験を行う。同様の接着効果が得られるならば,水酸基が接着の支配要因であるという,意義深い結論を得ることができる。
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Causes of Carryover |
超純粋製造器用の交換用フィルターを購入する予定であったが,現有品が故障・修理不能(交換部品なし)となった。そのため,新機種を導入したが,伴って故障機種の交換フィルターを購入する必要がなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たに「パーフルオロアルキル鎖の双極子アレイ」に関する研究を追加することから,そのために必要な薬品購入代金に充当する。
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