2014 Fiscal Year Research-status Report
軽くてしなやかで強い超伝導フラーレンナノウィスカーの開発
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26600007
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
宮澤 薫一 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (60182010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木塚 徳志 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (10234303)
若原 孝次 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (40303177)
竹屋 浩幸 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (80197342)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フラーレンナノウィスカー / フラーレン / 超伝導 / アルカリ元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細長くてしなやかな超伝導フラーレンナノウィスカー(FNW)の合成を目的とする。C60飽和トルエン溶液とイソプロピルアルコール(IPA)を用いた手振り混合による強制混合液-液界面析出法により、C60ナノウィスカー(C60NW)の長さと直径が、溶液体積の関数として変化することと、溶液中の単位体積あたりのC60NWの数(数密度)が溶液体積のほぼ平方根に反比例して変化することを発見した。手振り混合において液-液界面が周期的に波打ち、液-液界面が円筒状に引き延ばされることにより相互拡散領域が形成される。この相互拡散領域は薄い厚みをもつ円筒殻を形成するが、この円筒殻体積中に発生する結晶核数が溶液体積の平方根に反比例して減少する結果が得られた。C60分子にC70分子を混合した合金ナノウィスカーを合成し、ヤング率の組成依存性を調べた。合金ナノウィスカーのヤング率は、C70の添加量(最大15 mass%)が増えるほど高くなった。すなわち、C70分子の添加による固溶硬化現象を発見した。また、長繊維C60NWの合成を、静置液-液界面析出法によって行い、C60飽和ジクロロベンゼン溶液にIPAを重層させることによって5mm以上の長いC60針状晶を合成した。この長いC60NWは、ラマン散乱・XRD分析では短いC60NWに比べて欠陥が少なく結晶性が良い。この長いC60NWの場合、アルカリ金属(K、Rb、Cs)添加C60NWは、24時間以内の加熱だけで超伝導体積分率が最大となるが、高磁場(~5T)の実験から臨界電流密度Jcは短いFNWより、2桁小さい。これは、アルカリ金属の分散の不均一性に由来すると考えられ、熱力学的な安定相であるA3C60への転移のバリアが高い。また、後者の実験ではC70が入ってもTcはほぼ変化せず、また、アルカリ金属の分散均一性が悪くなり超伝導体積分率は低くなったが、Jcは低下しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の目標のひとつは、1cm以上の長さのフラーレンナノウィスカー(FNW)を合成することであった。これまで5mm程度以上の長さのFNWの合成に成功しており、長さコントロールはおおむね順調に推移している。1cm以上に成長させる目的の中空フラーレンナノウィスカー(フラーレンナノチューブ、FNT)の合成研究においては、不純物水分量が多くなると、FNTの合成ができないことが判明した。これは従来知られていない成果である。C60-C702成分FNWを合成し、そのヤング率を複合型透過電子顕微鏡により調べ、C70の添加量が多いほうがヤング率が増加することが判明しており、機械的に強いFNWの合成に成功し、順当な結果を得た。超伝導化については、金属パイプへの粉末充填法による線材化を進めており、目的とする長尺超伝導フラーレン細線の合成に向かって研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、粉末充填法による長尺超伝導フラーレンナノ細線の合成、長繊維フラーレンナノチューブの大量合成、透過電子顕微鏡によるフラーレンナノウィスカーの強度測定を行う。特に、超伝導転移温度の上昇を目指して、ルビジウムやセシウムをドープしたフラーレンナノウィスカーもしくはフラーレンナノチューブの超伝導化の実験や、電気抵抗の直接測定による臨界電流密度の測定を行うことを目指す。また、真空熱処理によるフラーレンナノチューブが形状変化するのかしないのかについては明らかでない。熱処理による変化があるばあいは、繊維構造を維持することができなくなる恐れがあるので、超伝導線材を合成するための重要な研究課題となる。
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Causes of Carryover |
人件費(研究業務員)の当初使用予定額と実支出額との差による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入に用いる。
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Research Products
(26 results)