2014 Fiscal Year Research-status Report
構造を規定した酸化物表面をテンプレートにした水分子の結晶化に対する電場効果の解明
Project/Area Number |
26600024
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
笹原 亮 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (40321905)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 結晶成長 / 固液界面 / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水中で接近させた周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)の探針と酸化物表面間に局所高電場を発生させ、H2O分子を特異的に結晶化させる。結晶化プロセスおよび電気的・力学的特性をFM-AFMを用いて分子スケールで観察・解析する。研究の成果は、外場および水素結合や配位結合などで分子を配向・配列させる結晶工学(クリスタルエンジニアリング)に表面科学の手法を持ち込むものであり、ナノスケールの材料科学と表面科学の境界を切り拓く契機となる。 本年度は、Nb:TiO2(100)表面へのSiOXを気相堆積を実施した。堆積条件(温度、速度、SiOX量)を調整したが、非ドープTiO2(100)表面を基板とした際に作製されるSiO2-(3×4)超薄膜は作製できなかった。XPSによる表面組成分析により、TiO2(100)/SiO2界面にNbが偏析することがわかった。高濃度のNbがOとTiで構成される基板の(1×1)構造の形成を阻害すると考えられる。現在、非ドープTiO2(110)表面に立ち返り、表面水酸基(OH基)が原子スケールで周期配列したテンプレート表面を作製することを進めている。TiO2(110)-(1×1)表面に超高真空中で酸素原子欠陥を作製し、H2Oを解離させてOH基を作製する。これまでにOH基の被覆率を0.2程度に増大させることに成功している。 研究の過程で、MgO(100)表面に<011>ステップを選択的に作製することに成功した。この<011>ステップ表面はOH基配列テンプレートにはならなかったが、<011>ステップに水中で難溶性Mg(OH)2がエピタキシャル成長することを見出した。MgOは、構造部材や生分解性インプラントとして用いられるMg材の不動態皮膜である。難溶性Mg(OH)2の選択的成長を実現できれば、Mg材の侵食性の制御に繋がるため、研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、NbドープTiO2(100)(Nb:TiO2(100))単結晶表面に気相堆積法によりSiO2超薄膜を製作し、表面の水酸基(OH基)及び吸着H2O分子を周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)で画像化して、テンプレート表面-純水界面の構造を超高真空中で解明することを目標とした。 Nb:TiO2(100)表面に作製したSiO2薄膜の表面原子は周期配列しておらず、結晶成長のテンプレートとして活用できないことがわかった。そこで方針を変更し、非ドープTiO2(110)表面を超高真空中清浄化して(1×1)表面とし、電子線照射により周期配列したOH基を作製できることを見出した。これまでにOHの被覆率を0.2程度に増大させることに成功した。現在、OH層上にH2O分子を吸着させてH2O分子の吸着構造・配向に対する電場の影響を解析するという課題を進めており、平成27年度の課題である液中での結晶成長に着手する目処が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
水酸基(OH基)で被覆したTiO2(110)表面で、吸着H2O分子の配列・配向に対する電場の影響を超高真空中で解明する。OH被覆TiO2(110)表面を水中に導入して周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)探針-表面間のサブナノギャップに高電場を発生させ、電場強度を調整してH2O分子の配列・配向を制御し、H2O結晶生成に挑む。 非ドープTiO2(110)表面を超高真空中で清浄化して(1×1)表面とし、電子線のエネルギー及び照射時間を調整して高被覆率OH層を作製する。TiO2基板を液中FM-AFMに導入して溶液セルに純水を注入し、探針先端を表面に徐々に接近させながら、吸着H2O分子、表面OH基の配置・配向を分離して解析する。空冷-水冷2段のペルチェユニットを用いてFM-AFM試料ステージに低振動冷却システムを構築し、TiO2基板を背面から冷却する。TiO2表面を冷却し、低温でのH2O分子の結晶化過程をFM-AFMで解析する。 次に、室温で探針-TiO2表面間に電圧を印加した状態で吸着H2O分子、表面OH基の配置・配向を解析する。更に、TiO2表面を冷却してH2O分子の結晶化過程を解析する。無電場下の画像と比較し、H2O分子の結晶構造に対する電場の影響を解明する。
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Research Products
(4 results)