2014 Fiscal Year Research-status Report
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26600025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 理尚 京都大学, 化学研究所, 助教 (30447932)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / 有機電子材料 / 電子輸送材料 / 三次元パイ電子系 / X線構造解析 / Alq3 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,多環式π共役系を金属原子に配位させて分子の立体構造を制御することにより,シート型あるいは3Dネットワーク型構造をもつメタル化π電子材料を創成し,電極活物質,有機太陽電池などに向けた機能性材料を提供することを目的としている。過去に開発されてきた電子輸送性材料を見ると,フラーレン誘導体(有機太陽電池)やAlq3(有機EL)などがよく知られているが,いずれの分子も三次元に広がったπ共役系が物性発現に重要な役割を担っている。本年度の研究では,Alq3の鍵構造として中心金属への配位構造に焦点をあて,キノリノール配位子にナフト縮環構造を導入することによるπ拡張効果を解明することを目的に,トリナフト縮環型Alq3の合成ルートを開発した。 まず,ナフト縮環キノリノール配位子の合成法について検討した結果,5-ブロモ-8-キノリノールを出発原料として,1) 水酸基の保護,2) ホウ素化,3) 1,8-ジブロモナフタレンとの鈴木カップリング,4)酢酸パラジウム(II)触媒を用いた分子内直接的アリール化,5) 水酸基の脱保護,という5段階の反応を経て,ナフト縮環キノリノール配位子を合成した。さらに,塩化アルミニウム(III)との反応により,トリナフト縮環型Alq3を濃紫色固体として合成することができた。得られた錯体の溶解性は非常に低かったが,ODCB/アセトニトリル混合溶媒から微小単結晶が得られ,予備的なX線結晶解析の結果,トリナフト縮環型Alq3とアセトニトリル分子との共結晶であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度の研究では,金属への配位サイトをもつ拡張π電子系骨格の一つとして,ナフト縮環キノリノールを簡便な経路で合成できることを示した。溶解性を向上させるための置換基の導入と,それがパッキング構造に及ぼす影響を解明する研究に進めるための知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は,前年度に開発した合成ルートの最適化を引き続き進めるとともに,置換基導入により溶解性を高めたトリナフト縮環型Alq3誘導体を合成し,固体構造および固体物性の解明,さらには有機太陽電池の新しいn型半導体材料として展開する。さらに,拡張π電子系に複数の金属配位サイトを導入することにより,金属を介したπ電子系のネットワーク構造を構築し,電極活物質としての応用を図る。
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Causes of Carryover |
H26年度の研究においては,合成経路の探索のため主として小スケールでの合成実験を実施した。固体物性を評価するには,よりスケールアップした合成実験が不可欠となる。薬品などの物品費に多額の経費が見込まれる状況であったため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度の助成金は,主として薬品などの消耗品費として計上する。
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