2014 Fiscal Year Research-status Report
サブナノ白金クラスターを生み出す膨張化炭素繊維-燃料電池用電極と抗癌剤への展開
Project/Area Number |
26600028
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
石川 雄一 大分大学, 工学部, 教授 (30184500)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
信岡 かおる 大分大学, 工学部, 助教 (10398258)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | サブナノクラスター / 白金粒子 / 膨張化炭素繊維 / 配位性デンドロン / 燃料電池電極 / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度の大目的は、ナノ粒子よりも小さなサブナノ白金クラスターを生み出すデンドロンの炭素繊維上への固定化技術の手法を開発することとした。効果的にサブナノ径の白金を炭素繊維上に固定化するために、白金イオンを窒素系デンドロンに錯化固定化し、続けてそれを還元処理することで[(サブナノPt@デンドロン)@膨張化炭素]を調整する方法を採用した。このためには、まず、膨張化炭素繊維上のカルボン酸基の数を増やす必要があった。炭素繊維上の官能基を増やすために多様な酸化還元処理を試みた結果、80℃以下の濃硫酸と過酸化水素による酸化処理が最も効果的であることを見出した。また、炭素繊維を有機反応に用いる場合、溶媒選定が重要になる。炭素素材反応場としての芳香族性イオン液体について検討した。 官能基を増やした膨張化炭素繊維上に配位性デンドロンを固定化は、炭素繊維上のカルボン酸基を経由してアミノ基を導入後、アクリル酸メチルとのマイケル付加反応に次ぐそのメチルエステル基の加水分解を行い、生成したカルボン酸基にエチレンジアミンを反応させる操作を1世代として、これを繰り返して第4世代型の金属配位性デンドロンを炭素繊維上に形成させた。原料の酸化処理後の膨張化炭素繊維の水分散液は、酸性官能基のためにpH4.3程度の酸性を示す。一方、第4世代型デンドロンを目指して調整した炭素繊維の水分散液は、多数のアミノ基により、pH 8程度の弱塩基性を示すことを確認した。デンドロン修飾炭素繊維にPt(II)イオンを添加後、NaBH4などの還元剤で白金金属の固定化を試みた。この還元処理後の EDX, XPSなどのスペクトル分析から白金粒子の形成を確認した。しかし、TEM観察からはサブナノ粒子よりも、ナノサイズの粒子が多く炭素繊維上に存在していることを確認した。現在、燃料電池の酸素電極としての評価を開始したところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、研究期間内で明らかにすることとして次の三点を計画していた。(1)膨張化炭素繊維 ExCFsへのアミン系PAMAMデンドロン配位子の固定化と、サブナノ白金クラスター生成条件の最適化 - 世代数、還元条件とクラスターサイズの関係を明確にする。(2)「デンドロン@炭素繊維」電極を用いたサブナノ白金クラスターを何度も作成できるシステムのための電気還元条件、電極作成条件、白金クラスター交換配位子選定を確立する。(3)燃料電池の電極触媒の高性能化-酸素濃縮と耐水性のフッ素化デンドロンの最適化。 初年度の取組で、1.膨張化炭素繊維上の官能基を増やす化学処理方法を確立した、2.その官能基を経由して窒素配位性デンドロンを固定化する方法を定めた、3.膨張化炭素繊維上のデンドロンに白金粒子を固定化できた。但し、サブナノサイズよりも大きなナノ粒子の形成が多く認められた。現在、燃料電池の酸素燃焼電極としての評価を開始したところである。これらのことを判断すると、おおむね計画通りに展開していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
膨張化炭素繊維上のデンドロンに白金粒子を固定化できたが、サブナノサイズよりも大きなナノ粒子の形成が多く認められた。本研究の目的は、ナノ粒子の白金ではなくサブナノ粒子の白金を固定化した膨張化炭素繊維の燃料電池電極としての評価である。このためデンドロンに錯化した白金イオンの還元条件を詳細に探索したり、デンドロンの世代数の影響を検討することを早急に実施する。その上で、デンドロン未修飾の炭素繊維上への白金固定化実験などもコントロール実験用として調整する。 燃料電池の酸素還元触媒では、ナノサイズ以上の大きさの二元系触媒が良く使用されている。本研究では、白金粒子の大きさを量子サイズ効果まで小さくし、特異粒子Hot Particleなどによる予想外の活性を調査する取り組みである。また可能であれば、デンドロンの最終世代の端にフッ化炭素鎖を多点導入し、燃料電池電極における酸素濃縮効果と撥水問題を同時に解決することへも展開したい。具体的には、フッ化炭素鎖を、デンドロンに多点導入した[白金@デンドロン]@炭素繊維を用いる。その触媒をNafion膜で固定化し、電極として、②の酸素濃縮効果と撥水問題を同時に解決する視点から評価する。①の視点で、窒素中でサイクリックボルタンメトリーから白金の有効表面積を、酸素還元反応の活性評価は回転電極法から、電位パルス試験から耐久性試験を評価する。
|
Causes of Carryover |
平成26年度は、備品として凍結乾燥装置70万円と合成用試薬など85万円、人件費として72万円、海外旅費40万円を計上していた。初年度に研究を開始したところ、新たに購入する測定装置を活用する頻度よりも、校費からも転用できる有機合成の活動が中心であった。2年目には、サブナノ白金クラスターを固定化した炭素繊維の電極材料としての評価を使用するために蛍光装置の光学セルや顕微鏡の使用などの当初予定することが出来なかった経費が必要になると判断した。このため、初年度の経費を次年度に回するように、購入を計画していた凍結乾燥装置については年度途中で他研究者から借用したり、海外出張は次年度の5月(フランス)に実施することにした。初年度で不足分は、研究室の校費を使用している。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
炭素素材の購入費が当初よりも高額になることが判り、原料となる炭素素材の購入費に活用する。また、成果発表の旅費、炭素繊維の電極材料としての分析評価のための蛍光装置の光学セルや電子顕微鏡の消耗品と使用費などの当初予定することが出来なかった経費に活用する。
|
Research Products
(3 results)
-
-
[Journal Article] Proline based chiral ionic liquids for enantioselective Michael reaction2014
Author(s)
K. Nobuoka, S. Kitaoka, , T. Kojima, Y. Kawano, K. Hirano, M. Tange, S. Obata, Y. Yamamoto, T. Harran, Y. Ishikawa
-
Journal Title
Org. Chem. Int.
Volume: 2014
Pages: ページ表記なし
DOI
Peer Reviewed
-