2014 Fiscal Year Research-status Report
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26600037
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笹木 敬司 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00183822)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / ファノ共鳴 / 光駆動 / 超解像光イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
カンチレバーを共鳴振動周波数で光駆動したときに探針が静止する無振動ダイナミックモード原子間力顕微鏡(AFM)システムを世界に先駆けて開発することを目的として研究を推進している。本システムは、広帯域振動モードと共鳴モードの打消し合い干渉により振動が完全に抑制されるメカニカルなファノ共鳴現象を利用した新奇なアイデアに基づくAFMである。共鳴ピークで振動振幅をゼロに制御する零位法であるため、力感度・空間分解能を大幅に向上することができる。本年度は、AFMカンチレバーに集光レーザーを照射したときの熱伝導・熱膨張を数値計算し、カンチレバーに作用する応力の空間分布・時間展開を解析すると共に、レーザー光の強度変調により誘起される振動状態を時空間解析する新しいシミュレーション手法を開発した。本手法を用いて、熱伝導率・熱膨張率・ヤング率の異なる2つの物質の層状構造カンチレバーについて、様々な振動モードの振幅・位相特性を解析し、探針先端の振動におけるファノ共鳴スペクトルおよび集光スポット位置依存性についてシミュレーションを行い、共鳴周波数で探針先端が静止する(探針先端以外の部位は振動する)状態について詳細に分析した。光駆動ファノ共鳴振動の解析には膨大な計算量が必要となるため、並列処理型高速コンピュータの導入と共に、解析アルゴリズムの効率化・高速化を図った。カンチレバーの形状・材質、光スポットサイズ・強度、レーザー波長等をパラメータとして数理シミュレーション解析を行い、光駆動ファノ共鳴ダイナミックモードAFMの設計、最適な実験条件の探索を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、光駆動ファノ共鳴振動のシミュレーション解析および光駆動ファノ共鳴ダイナミックモードAFMの設計に集中して研究を実施した。シミュレーション解析の結果、1)強度変調した集光レーザーをカンチレバーに照射して探針先端の振動の周波数特性を観測すると、非対称な共鳴ピークが現れ、ピーク形状が集光スポット位置に依存して変化する、2)特定の位置で光励振すると、共鳴スペクトルはディップとなり、共鳴周波数で振動振幅をゼロにすることができる、また、3)共鳴周波数の前後で位相が急激に変化し、位相変化率が1000倍以上増大されることが明らかになった。この現象は、観測周波数帯域でブロードなスペクトルを持つ振動モードと狭帯域共鳴振動モードの干渉によるファノ共鳴であり、カンチレバー上の光励振スポット位置によって各振動モードの振幅と位相を制御することで、モード間で振動が打ち消し合って探針が静止する状態を生成できる。このファノ共鳴コントロールは、圧電素子駆動方式では不可能であり、カンチレバーの任意の位置を非接触で励振できる光駆動AFMにより初めて実現することができることを示すことができた。これらの成果は研究計画で期待していたものであり、おおむね順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、AFMと光学顕微鏡を組み合わせたシステムに、正弦波電圧で強度変調した半導体レーザーをカンチレバーに集光する光学系を導入し、設計に基づいて光駆動ファノ共鳴ダイナミックモードAFMを構築する。光強度変調周波数を掃引しながら、光テコで探針先端の振動振幅・位相を検出してファノ共鳴振動スペクトルを観測し、シミュレーション解析にデータをフィードバックしながら実験システムの最適化を行う。無振動ダイナミックモードAFMの制御系としては、まず、光強度変調周波数を共鳴ピークに設定し、カンチレバー上で集光スポットを走査して探針先端の振動振幅がゼロになる位置に調整する。この状態で探針を試料に近づけて微弱な原子間力・分子間力を作用させると探針先端が振動をはじめる。次に、共鳴周波数から極僅かに離調した状態で振動振幅がゼロまたは位相がπ/2になるように探針-試料間距離をピエゾアクチュエータでコントロールしながら表面形状を観測する。また、更なる力感度の向上のために、光テコの検出信号をレーザー強度変調電圧にフィードバックする自励発振回路を組み込んだシステムも試作する。標準試料を用いて力感度や空間分解能等の性能を評価した上で、金属ナノ構造体や生体試料の高分解形状イメージングを実現する計画である。得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
現有の半導体レーザーを自作で改造することにより光駆動ファノ共鳴ダイナミックモードAFMシステムを組むことができたため、購入の必要がなくなった。また、経費の節減・効率的仕様により未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
光駆動ファノ共鳴ダイナミックモードAFMシステムを早期に完成し、シングルナノメートルスケールの空間分布を持つ光局在場の高感度・高分解能計測を早期に実現するために、初期計画より多く必要になると予測される光学部品とAFMカンチレバーに集中的に予算を使用する計画である。
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[Presentation] Development of unique random laser2014
Author(s)
R. Niyuki, H. Fujiwara, and K. Sasaki
Organizer
Belgium and Japan Joint Symposium on Nanoplasmonics and Nanoimaging Chemistry
Place of Presentation
Hokkaido University(Sapporo, Hokkaido)
Year and Date
2014-10-10 – 2014-10-10
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[Presentation] Mode-Controlled Ultraviolet Random Lasers2014
Author(s)
H. Fujiwara, R. Niyuki, K. Sasaki
Organizer
HOKUDAI-NCTU Joint Symposium (Extension from RIES-CIS Symposium) on Nano, Photo and Bio Sciences
Place of Presentation
Hokkaido University(Sapporo, Hokkaido)
Year and Date
2014-09-10 – 2014-09-11
Invited
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