2014 Fiscal Year Research-status Report
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26600051
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Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
鈴木 哲 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主任研究員 (00393744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日比野 浩樹 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 部長 (60393740)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グラフェン / プラズモン / テラヘルツ / 光学的異方性 / 八木・宇田アンテナ / 位相干渉効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.有限要素法を用いた電磁界解析を習得するとともに、境界条件の最適化により原子層厚のグラフェンの電磁場応答や光スペクトルのシミュレーションを可能にした。2.シミュレートしたグラフェンリボンの透過・反射・吸収スペクトルにプラズモン共鳴によるディップやピークを観測した。3.実験で得られるグラフェンのドープ量を想定するとマイクロメートル幅のグラフェンリボンの共鳴周波数はテラヘルツ領域に得られるとシミュレーションから想定された。4.幅が僅かに異なる(例えば2.0マイクロメートルと2.1マイクロメートル)、従って共鳴周波数が僅かに異なるグラフェンリボンを数マイクロメートルの間隔を空けて積層することにより、テラヘルツ領域の光学スペクトルに大きな異方性が現れることをシミュレーションで示した。この場合、系の物理的な対称性が低下しているため積層構造の上から光を入射したときと下から入射したときでは反射・吸収スペクトルが異なる。共鳴周波数の近傍で特定の方向からの入射光に対して反射率がほぼ消失(吸収率が増大)する条件が存在する。5.同様にフェルミレベル位置が僅かに異なる(例えばディラック点を基準に0.20 eVと0.18 eV)グラフェンリボンの積層構造を数マイクロメートルの間隔で積層することにより、4と同様な光学的異方性が得られることを明らかにした。6.この光学的異方性は、超短波帯で用いられる八木・宇田アンテナ様の位相干渉効果によるものであると推察された。7.ただし通常の八木。宇田アンテナに比べ、グラフェンのプラズモンを利用するアンテナは極めてコンパクトである(波長換算で1/10以下)ことを示した。8.プラズモン共鳴による光透過率の減少やその偏光依存性を実験的にも観測することができた。実験による検証の準備を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超短波帯で用いられている八木・宇田アンテナからの類推から、物理的に僅かに異なるグラフェンパタンの積層により光学的異方性が得られることを期待していたが、課題申請時点では確証が得られていなかった。研究の初期段階で電磁界解析によりこの予想が正しいことを実際に確かめることができたことは大きな前進であるといえる。また実験的にもプラズモンを光学的に観測することができ、今年度の実験的検証に向けて準備が整いつつあるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度はシミュレーションによるアイデアの検証が中心であったが、二年目は実験による検証に力点を置く。実験による検証を容易ならしめるため、当初考えていた同一平面上にグラフェンパタンを並べる構造(通常の八木・宇田アンテナに近い)ではなく、グラフェンリボンを縦に積層する構造を採用することにする。リボンをアレイ化して積層することにより、グラフェンアンテナの有効面積を大幅に増加させ、FTIR装置によるスペクトルの測定を可能にする。外部電場によりグラフェンのフェルミレベル位置を可変しつつ光学測定を行うべくFTIR装置の改造と必要な治具の作製を行う。 グラフェンパタンの積層により立体的デバイス構造となりまたこのようなグラフェンデバイス構造の試みが他にほとんど無いため、新たにプロセス開発が必要となる。特にグラフェンパタン間のスペーサーにはテラヘルツ光に対して透明な材質が要求される。また各グラフェン層に個別にゲート電圧を印加しそのフェルミレベル位置を制御するために、ゲート電極の作製にも工夫が必要である。更にパタンを積層する際の位置合わせの精度が特性に重要な影響を及ぼす可能性もある。現在これらのプロセス方法について検討を行っている。
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