2014 Fiscal Year Research-status Report
シリコンナノポアを用いた光学検出による一分子DNAの塩基配列情報解読
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26600055
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎木 敏治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70261196)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオセンシング / ナノオプティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
現行のシーケンシングにおける最大の課題である長いリード長(1~10万塩基)実現のために、光学的検出法を用いたナノポアシーケンサの開発を実施した。紫外光照射によってシリコンナノポア近傍に発生する光スポット(50nm程度)を利用し、長鎖DNAに対してナノポア通過過程だけでなく、通過後のドリフト・拡散運動の観測に成功した。これにより、ナノポア通過直後のDNAのコイル化過程が明らかとなった。また、紫外照射光のビームプロファイルを変化させることにより、観察領域がナノポア直下で調整できることを見出し、DNAダイナミクスをより詳細に議論することが可能になった。また、電解質溶液のイオン種に対する通過過程の依存性を同様に観察し、その傾向が、正イオンのDNAへの吸着率の違いによって説明できることを明らかにした。 ナノポアに金ナノ粒子を充填し、電場局在・増強にともなう高分解能化、高コントラスト化を目指したプラズモニック・ナノポアの作製、評価を行った。ナノポアメンブレン材料として、シリコン、ならびに窒化シリコンを選定し、集束イオンビームによってナノポアを形成した。電気泳動を利用した、高効率な金ナノ粒子充填法を開発し、金ナノ粒子単体だけでなく、より電場増強度の高い二量体の充填にも成功した。二光子励起発光測定により、電場増強の実現を確認し、電磁界シミュレーションとの比較を行った。 ナノポア近傍での急峻な電場勾配を活かした高分解能化を目指し、DNA修飾蛍光分子をナノポア通過直後に消光するメカニズムとして、STED光同時照射による消光を利用する方法を検討した。計算機シミュレーションにより最適な二波長の組み合わせを探索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAナノポア通過過程の高時間分解能観察によるコイル化過程の解明やプラズモニック・ナノポアの高効率作製法の考案など、想定以上の成果が得られている。一方で、高分解能検出において若干の遅れが出ている。修飾した蛍光体が電解質溶媒中で予想以上に脱離することが原因であることを明らかにしており、他の蛍光体による修飾を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
新しい蛍光体修飾により、50nm分解能による塩基配列分布測定を早急に実施する。DAPIに代わりATTO、ならびにカチオン化した量子ドットによる修飾を行う。 プラズモニック・ナノポアによるDNA通過過程観測を実施し、得られる空間分解能、コントラストを通して、電場局在・増強度を評価する。 STED光照射による、ナノポア通過後の蛍光体の消光を利用した空間分解能の向上を実証する。
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Research Products
(5 results)