2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子プラズモンによる超回折限界精度での熱励起を用いた微細構造の選択的駆動
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26600058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅 哲朗 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (30504815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩瀬 英治 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (70436559)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 表面プラズモン共鳴 / 熱アクチュエータ / MEMS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光の回折限界を超える超微小領域(10nm~1um)の選択的な駆動を実現するために、金属ナノ粒子をヒータとして用いた熱駆動型アクチュエータを提案する。楕円体など、等方的でない形状のナノ粒子は、照射光の偏光方向に対して光粒子が100倍以上異なる。これを生かし、複数のナノ粒子を異なる向きで配置し、特定の偏光を持つ光を照射することで、特定のナノ粒子だけを選択加熱することができる。この方法では、光吸収による加熱領域が光スポットには依存しないため、光回折限界以下の局所加熱が可能となる。この局所加熱方式をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によるバイメタル型カンチレバーアレイに統合することで、照射光の波長・偏光方向による特定カンチレバーの選択アクチュエーションを実現することが、本研究の最終的な目標である。 本年は、実際にMEMSバイメタル構造を試作し、実際に光照射によって熱駆動可能かどうかを検証する実験検証を進めた。リフトオフ法により波長約1.5umの光が表面プラズモンに結合可能な、ピッチ3.2umの金一次元回折格子を試作した。この構造を光吸収層として備える、厚さ20umのMEMSカンチレバー構造を実際に試作した。まず、MEMS構造に波長1550nmのTM光を照射して表面プラズモン共鳴による吸収促進が生じることを確認した。その結果、MEMSカンチレバー上でも表面プラズモン共鳴による吸収点がみられ、問題なく吸収層が実現できていることを確認した。しかし、この表面プラズモン条件で光照射を続けても、構造の変形は計測できなかった。この問題として、利用したレーザ光源の出力が10mWと小さく、発熱量を十分確保できなかったことが原因と考えられる。そこで、断熱構造や、レーザ強度を高めた場合の駆動の実現性を確認するために、繰り越しを行い、平成28年度も継続して研究を進めることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
熱駆動のためのMEMS構造の試作を行ったが、基板からの熱の逃げ等の要因により、想定した駆動が得られていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、実際にMEMS構造上に金属ナノ構造による吸収体を構成して、実際に光を照射して駆動実験を行った。結果として、駆動には成功しなかったものの、金属ナノ構造吸収体とMEMSカンチレバー構造が共存して構成可能なプロセスを確立したといえる。今後は、有限要素法などにシミュレーションを利用して、基板からの熱の逃げを少なくする断熱に適したカンチレバー構造や、光吸収に適した金属ナノ構造の設計、および、空気など周辺環境からの熱の逃げなどを考慮して、実際に試作可能なMEMS構造の設計指針を獲得する計画である。
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Causes of Carryover |
本年度は、提案内容の実験的な検証として、MEMS構造を試作し、現有のレーザ装置によって加熱実験を行った。それらの光学実験を行う際の光学素子や実験消耗品などは、前年度までに購入したものを利用した。その際に、駆動実験を進めるためには、レ―ザーの強度の見直しや、発熱条件などを考慮した再設計が必要ということが分かり、それらの検討を進めることを優先した結果、次年度使用額が発生したものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、発熱状態やその際に必要な機械構造の寸法などの検証をさらに進めるために、有限要素法シミュレーションソフトなどの導入を検討している。また、再設計と実験を進めるために必要な光学部品や電気回路部品などに次年度使用額を利用する計画である。
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