2014 Fiscal Year Research-status Report
微小流路と電極対の高密度集積によるアレイ型多機能放電ジェットデバイスの実現
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26600064
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
高尾 英邦 香川大学, 工学部, 教授 (40314091)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / 先端機能デバイス / プラズマ加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,複数の微小流路にガスや液体を流して放電を独立制御し,複数種類のガスプラズマや液体の噴流(ジェット)を微小空間で同時かつ任意の組み合わせで生成可能な「アレイ型多機能放電ジェットデバイス」を提案し,実現する。高密度・多種類の放電ジェットを独立制御することで ,ジェットアレイ全体の形状,相対位置,構成ガスの分布や照射の時系列関係を自在に変化させることができる。これらの新しい機能を持つデバイスの検証実験を進めることを本研究の最終目標とする。本年度は以下2つの項目について研究を行った。 1. 狭ピッチの流路間における電気絶縁構造の開発:320ミクロンのピッチでプラズマ生成用流路を1次元状にアレイ化することで,高密プラズマジェットアレイを実現した。流路間隔が狭くなるほど隣接する放電電極間の絶縁は困難であったが,ガラス/シリコン/ガラスのサンドイッチ構造を用い,かつ,適切なギャップを設けることで強固な絶縁構造を形成できた。また,従来行った実験ではアーク放電が発生し,電極の消耗が著しい問題があった。今回は電極をシリコンで形成し,放電安定性にも優れたデバイスを実現することができた上,耐性に優れた電極構造を形成してデバイスの放電安定性を大きく向上させることができた。 2.水ジェットの発生に向けた水中放電の安定化と反射流路の形成 微小流路内の水中放電によって水激流を発生するため,これまでの知見に基づいて微小流路を設計・作製し,水ジェットの発生を試みた。放電時の高速カメラ画像より,水激流が生じていることを確認したが,十分な勢いで水ジェットを生成することは困難であった。これは水が持つ高い粘性と水中放電に耐えられるだけの電極を形成できていないことが原因である。これらに適切な対策を施すことで,水ジェットが実現される可能性は十分あるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の2.4ミリメートルピッチを大幅に縮めた320ミクロンピッチのプラズマジェットアレイを形成することに成功しており,この点でいえば当初の計画以上に研究は順調に進展している。一方で,水ジェットの生成には予想外の問題も生じてきており,解決に向けた課題も明らかとなってきている。総合的には,研究開始当初から様々な知見やノウハウが順調に明らかとされているため,近い将来の成果も期待できる。よって,本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでに製作したデバイスをベースとして,各種ガスと液体の混合ならびに流量制御技術のデバイス集積にむけた研究展開を行う。本研究の特徴である複数種類のガスや液体の供給を自在に行うための混合,流量制御技術も合わせてデバイス内で融合する必要があるため,気体と液体の供給を高いON/OFF比で連続的に制御するための微小ギャップ型スライドバルブ型流量調節器を開発する。様々な気体や液体の流路内混合機構を実現し,適切な放電条件へと制御可能な各種ガスと液体の混合ならびに流量制御機能を実現する。 また,最終的な「アレイ型多機能放電ジェットデバイス」の集積化実現にむけた研究を推進する。複数ガスをプラズマ状態同士でチップ内外において融合したり,気体と液体の混相流に対する放電を実施したりすることができる新規のデバイス機能を実現してゆく。高密度流路で形成されたジェットアレイ全体の形状制御や液相,気相ジェットの同時生成技術など,本提案の核となる技術の実証と評価・検証を行いながら,デバイスの安定性,信頼性,安全性に係わる放電ジェットの基礎特性評価を進めてゆく。
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Causes of Carryover |
今年度の研究実施内容に関しては,マイクロデバイスを製作するための材料や消耗品類は,我々自身で準備したものを再利用して実施することが可能であった。これは研究開始当初には予想することが難しく,研究を実施した結果として生じたことである。マイクロデバイスの製作についていえば,今年度は非常に高い効率で研究資源を再利用することができたといえる。よって,ここでの資源を次年度以降に製作する機材やマイクロデバイスの開発に向けて,研究予算を最大限効率よく活用してゆくことが可能である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プラズマジェットアレイと流体制御デバイスを一体化した機能集積型ジェットアレイデバイスを実現し,その評価を行うための新たな計測システムを構築する。具体的には微小流量計測器や高圧放電機構を構成するための機材,消耗品類に研究予算を用いてゆく予定である。
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