2014 Fiscal Year Research-status Report
分子分解能を有する3次元構造センサの開発と細胞固液界面構造解析への応用
Project/Area Number |
26600065
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
本間 敬之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80238823)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳沢 雅広 早稲田大学, 付置研究所, 教授 (20421224)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 表面・界面 / プラズモニクス / 表面増強ラマン散乱 / 細胞表面 / マイクロ・ナノファブリケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はサブナノメートルの三次元空間分解能をもって固液界面、特に細胞など生体表面の観察・解析をラベルフリーで可能とする新規なセンシング手法を確立し、細胞機能の分子レベルからの詳細な解析への応用展開をはかることを目的としている。そのための観察手法として表面増強ラマン散乱分光法を適用し、ナノサイズの金属粒子(Au,Ag等)を配したナノ構造体(プラズモンセンサ)を試料表面に接触させ、金属ナノ粒子近傍の局所電界勾配の急峻化の利用を意図している。本手法により深さ方向の空間分解能0.1nm、面分解能数nmオーダーの達成が見込まれ、細胞表面の機能部位の分子レベルの構造や代謝メカニズムの解明への寄与が期待される。 本年度は要素技術の確立を目的に検討を行った。まず従来より検討を進めてきた、いわゆる透過型プラズモンセンサ形成の高度化を進めた。本センサはガラスレンズ表面に金属ナノ粒子を形成したものであり、これを試料表面に接触させることにより高感度計測を行うものであるが、金属ナノ粒子の形状およびその表面における分散状態や均一性が課題であった。そこでシリカ薄膜にナノインプリント法を用いて規則的な微細孔を形成し、その内部に金属を充填形成することにより均一なナノ粒子分散型構造を形成する手法を検討した。これを用いてラマン測定を行ったところ感度の大幅な向上が確認された。加えて測定の信頼性を向上させるため、試料表面に対する接触点を複数化した形式のものについても検討を行った。またシリカ製の微小チューブ配列を形成し多点接触型プラズモンセンサを形成するための微細加工プロセスの最適化を行った。これらの手法を用い、疑似細胞膜として自己組織化単分子膜の表面から界面までの深さプロファイルを0.1nmの分解能で測定し、単分子内の分子配列を解析することに成功した。さらに脂質膜を用いた検討を行い本手法の有効性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は初年度であり、本研究推進のための要素技術の確立を念頭に研究を進めた。その主眼は、本解析に適した三次元ナノ構造を有するプラズモンセンサの形成、および細胞表面解析手法の最適化である。特に前者については今後検討を進めるための前提条件となるため重点的に検討した。従来型のセンサの課題は、感度増強発現のための金属ナノ粒子(Ag, Au等)の粒径および表面分散状態の均一性、また試料表面に対する接触性および耐久性であった。これらを解決するため、まずシリカ薄膜表面に規則孔を配列形成し金属を充填する手法を適用した。この手法により金属ナノ粒子を均一に形成可能であることを見出した。また、試料表面に対する接触性の向上および将来的には表面への積極的な作用(例えば特定の化学種を含む薬液の注入など)を考慮し、微小なシリカチューブからなるセンサを形成するためのプロセス技術の開発に着手した。このようなシリカの微小構造体を形成する基本的な部分については、従来本研究者らが開発した光照射援用陽極化成法を用いたプロセスを適用し、本研究に適した形状(径、ピッチ、深さなど)のものを形成可能とするようなプロセスの最適化を行なった。またその先端に金属ナノ粒子を担持させる手法についても検討を行なった。これらの結果から、目的にかなったセンサ構造体の形成が可能であることを明らかにした。また本法を適用した細胞固液界面対応測定セルを開発すると共に、疑似細胞膜として自己組織化単分子膜の表面から界面までの深さプロファイルを0.1nmの分解能で測定し、単分子内の分子配列を解析することに成功した。さらにL-α-phosphatidylcholineおよびその脂質膜を対象とした計測も行い、本検討の有効性を実証すると共に、次年度の展開への足掛かりを得ることができた。以上の成果より研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の検討で得られた成果を基に、ナノ構造体センサの形成プロセスをさらに高度化すると共に、その動作の検証および有効性の確認に関する検討を進める。まず微小シリカチューブ構造体型センサの形成については、チューブ先端への金属ナノ粒子の形成手法に関する検討を進める。チューブの先端をウェットエッチングにより削り微小な開孔を形成した後、選択めっき法により孔内部にAgまたはAuを埋め込む手法を検討する。これを用いて面分解能の向上を検証する。面分解能は第一には埋め込み金属の直径すなわちチューブ先端の開孔径により決まるので、まず光の回折限界を下回る径(300nm以下)に挑戦し、さらに微小化の限界を探る。微細加工の限界に近い50nmレベルまでは可能と予想している。また研究者らによる時間領域差分(FDTD)法による計算機シミュレーションの結果においては、ナノ粒子のサイズよりも小さい領域において電界増強が生じることが予想されているため、その実証についても試みる。最終的な目標としては、数nmオーダーのレベルの面分解能を目指したい。このレベルであれば、生体物質のタンパク質の単分子の検出や、さらに三次元計測により、単なる分子の化学的な構造のみならず分子の幾何学的な構造(配向構造、構造異性体、光学異性体など)についても解析可能となることが期待される。また試料表面との接触状態が重要な因子であることから、これを最適化できるようなセンサ形状(例えば多点接触の状態など)についても検討を行う。 また形成したセンサを用いた細胞観察については、表面の糖鎖および細胞膜の深さ方向プロファイルの解析を進めると共に、膜表面に存在する機能構造体(イオンチャンネルなど)の三次元分子構造の観察を試みる。
|
Causes of Carryover |
今年度予算には細胞観察用セル(特注品)として80万円の支出を計上していた。これは新規に設計・試作することを前提にしていたものであったが、実際に研究を進める中で、現有セルの設計および一部部品を流用することにより、求められる性能のものを安価に手当可能となったため、差額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はセルおよびセンサ形成を一層高度化する予定であり、このための微細加工プロセス等に支出が見込まれるため、その費用に充当し研究を加速する。
|
Research Products
(4 results)