2015 Fiscal Year Research-status Report
光誘起表面振動による揮発性大容量ホログラフィックランダムアクセスメモリの検討
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26600070
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
茨田 大輔 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80400711)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 揮発性ホログラム / 光ランダムアクセスメモリ / 光誘起表面変形 / 空間光変調器 / アゾベンゼン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光駆動デフォーマブルミラーをホログラフィックランダムアクセスメモリとして応用することを目的としている。光駆動デフォーマブルミラーの構成は、ガラス基板に光エネルギーを運動エネルギーに変換させる吸収層、運動エネルギーによって表面変形する反射層からなる。平成26年度は、レーザー光照射による表面変形自体は確認されたが、微細な表面レリーフホログラムの形成は確認されなかった。この原因として、アルミニウムまたはクロムからなる反射層の張力によって吸収層の変形を抑制しているためと考えた。そこで、平成27年度では、反射層を微細な格子状に加工し、マイクロミラーアレイとすることによって、変形可能とすることを試みた。また、吸収層としてアゾベンゼン薄膜を用いた。 マイクロミラーアレイ構造は、電子ビームリソグラフィによって形成させた。まず,ガラス基板にアゾベンゼンポリマーをスピンコーティングすることによってアゾベンゼン薄膜を作製した。そのアゾベンゼン薄膜の上に電子ビームレジストをスピンコーティングし、さらに透明導電膜をスピンコーティングした。このサンプルに、1ミクロン周期で700nm~800nm角の正方形パターンを電子ビーム描画した。現像によって描画パターンに応じてレジストを溶解させ、アゾベンゼン薄膜を露出させた。このサンプルにアルミニウム薄膜を真空蒸着した。さらに、電子ビームを一様に照射し、現像することによって残ったレジストを溶解させ、レジスト上のアルミニウムを除去した。以上の方法で、1ミクロン周期のマイクロミラーアレイを作製した。 このマイクロミラーアレイに,ガラス基板側から波長532nmのレーザー光による周期2ミクロンの干渉縞パターンを照射したところ、回折格子の形成が確認された。また、同一の波長532nmのレーザー光をミラー側から照射しても回折格子が維持されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度における研究で生じた表面レリーフホログラム(表面レリーフ型回折格子)が形成されないという問題に対して、マイクロミラーアレイを用いることによって解決を図り、表面レリーフ型回折格子の形成に成功した。しかし、研究計画において平成27年度では、記録信号光強度に対する回折光強度の比を求め、1以上とする条件を探索する予定であったが、その条件の探索はまだ行っておらず、以下のような探索方法を考案した。 実験結果より、回折効率は0.1%程度であったので、この回折格子の形成に使用した信号光のパワーは1mW程度であるため、回折格子に照射する再生照明光のパワーは1000mW以上としなければならない。このようなパワーのレーザー光を用いることはあまり現実的ではないため、記録信号光の強度を小さくすることを検討する必要がある。一つの方法として記録信号光と重ね合わせる参照光の強度をあげることが考えられる。こうすると、全体的にマイクロミラーを押す方向に光の圧力が増すとともに、圧力分布も増幅される。よって、回折効率を下げずに記録信号光の強度を小さくできることが期待される。信号光の強度および信号光と参照光の強度比を変えながら繰り返し実験し、より小さい信号光強度でより大きい回折効率が実現できる条件の探索を行う。 また、マイクロミラーアレイを用いずに、アゾベンゼン薄膜のみを用いた場合、より大きな回折効率が得られた。この場合、再生照明光が吸収層であるアゾベンゼン薄膜に直接照射されるため、表面レリーフが消えるという問題が生じる。しかし、ガラス基板側から照射する場合と、表面から照射する場合では、表面変形の偏光依存性が異なることを理論的に発見した。この特性を使えば、マイクロミラーアレイを用いなくても、表面レリーフの消失を抑制することが期待される。この検証は、平成28年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では、吸収層としてアゾベンゼン薄膜を用い、反射層にマイクロミラーアレイ構造を用いることによって、光駆動デフォーマブルミラー特性を得ることに成功した。平成28年度では、平成27年度に実施できなかった記録信号光強度に対する回折光強度の比を1以上にする条件の探索を行う。その方法として、記録信号光の強度および記録信号光と参照光の強度比を変えながら繰り返し表面レリーフ型回折格子の記録実験を行う。この実験結果より、記録信号光の強度をできるだけ下げ、回折効率をできるだけ上げる条件の探索を行う。また、サンプルとして平成27年度に作製したマイクロミラーアレイ構造をもつものを用いるだけでなく、反射層がないものも用いることを検討する。 平成27年度に構築したアゾベンゼン薄膜の表面変形に関する理論によれば、ガラス基板側から照射する場合、信号光と参照光が通る面に対して垂直に振動する光(s偏光)を照射した場合、表面変形が起こりやすく、平行に振動する光(p偏光)を照射した場合は起こりにくい。p偏光で表面変形が起こりにくいことは平成27年度の実験ですでに確認している。逆に、表面側から照射する場合、p偏光で表面変形が起こりやすく、s偏光で起こりにくい。このことは過去の実験で確認している。この照射方向依存性を利用すれば、記録は表面変形が起こりやすい条件で行い、再生は表面変形が起こりにくい条件で行えることが期待できる。 また、ランダムアクセスメモリとして応用することが可能かどうかの検討も行う。再生光を記録信号光としてフィードバックすることを想定し、記録と再生を同時に行う。このとき、記録信号光の強度は、回折光の強度以下になるように調整し、この条件下において、光を照射中に情報が維持されるかどうか確認する。また,記録信号を変えたとき、ただちに保持される情報が変更されるか確認する。
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