2014 Fiscal Year Research-status Report
機能性酸化物ナノ電気機械素子の作製と環境適応型超高感度センサ応用
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26600074
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 秀和 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80294130)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | MEMS / 先端機能デバイス / セラミックス / 強相関電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化物基板の異方性エッチングを利用したMEMS(Micro Electro-Mechanical System)は近年急速に発達し、センサやアクチュエーター等への応用が盛んに行なわれている。一方、圧力、熱、光などの様々な外場に対し巨大な物性応答を示す強相関電子系酸化物は、次世代エレクトロニクスを担うキーマテリアルであり、MEMSに活用すれば更なる性能の向上が期待できるが、酸化物基板における異方性エッチングについて、これまで報告例はない。MgO基板はリン酸や硫酸などに溶けることが知られているため、Oxide-MEMSを作製する標準基板に適していると考えられる。本研究では、酸化物薄膜の基板として広く用いられているMgO基板の結晶異方性エッチングを試みた。MgO(100), (110), (111)各基板にレジストをコーティングし、フォトリソグラフィーを用いてリン酸エッチングするためのパターンを作製した。濃度8.5%のリン酸を利用し、結晶方位とエッチング速度の関係、及びエッチング形状の評価を行った。リン酸8.5%におけるエッチング時間とエッチングされた深さの関係を、原子間力顕微鏡による断面プロファイルにより評価した。これにより、エッチング速度の大きい順に(110)>(100)>>(111)という結果を得た。共有結合性のSi基板では、定性的に表面のダングリングボンド数が多い面のエッチング速度が早いが、イオン結合性結晶であるMgOのエッチング速度は、ダングリングボンド数のみでは説明がつかず、極性面の存在を考慮する必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VO2-MESMデバイスは、土台となるMgO酸化物基板(犠牲層)の異方性エッチングが最初の関門であり、この点においては作製条件を明らかにすることが出来たため。今年度は次のプロセスに移り機能物性を担うVO2薄膜の蒸着と加工に移行する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られたMgO基板のエッチングの知見を基に、MgO基板上に強相関酸化物VO2薄膜を作製し、VO2薄膜/MgO基板へフォトリソグラフィーおよびナノインプリントリソグラフィーでパターン後、エッチングによりVO2ベースのフリースタンディングMEMSデバイスの作製を行う。 ●VO2フリースタンディング構造を作製するにあたり、パルスレーザ蒸着法を用いMgO犠牲層およびエピタキシャルVO2薄膜を順次積層する。 ●静電引力によりNEMS構造に応力を誘起できるPt電極層をスパッタ法を用い積層する。 ●VO2単結晶薄膜フリースタンディング化においては、前年度に得られた知見:MgO犠牲層がリン酸(H3PO4)エッチング溶液によって溶解することを利用する。特にサイズがナノレベルになると、凝集力・表面張力の影響が強く表れプロセス時に構造体が壊れやすくなることから、エッチング溶液の濃度、時間(エッチングレート)、既有の超臨界乾燥装置による事後処理の条件を詰め、sub-100 nmクラスの単結晶VO2-NEMS(フリースタンディング)構造体を作製出来る最適エッチング条件を明らかにする。 ●ゲート層へ電界印加条件下でのVO2-NEMSの電気抵抗の温度依存性を測定する。静電引力によりVO2フリースタンディング構造体を曲げ、動的な歪をVO2層に誘起する(右図)。系統的な歪-金属・絶縁体相転移との関係を調べ、リアルタイムな応力変化に対して巨大相転移が変調できる素子動作のデモンストレーションを行う。
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Remarks |
http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/bis/
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