2014 Fiscal Year Research-status Report
BiS2系層状超伝導体単結晶を用いた固有ジョセフソン素子の作製
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26600077
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
水口 佳一 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (50609865)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | BiS2系超伝導体 / 単結晶育成 / 超伝導異方性 / 固有ジョセフソン素子 / アニール効果 / 結晶構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究において,BiS2系超伝導体(NdO1-xFxBiS2)単結晶の育成に成功した.得られた単結晶を用いて固有ジョセフソン素子を作製することが本研究の最終目標であるため,得られた単結晶の基礎物性評価を行った.得られた単結晶は超伝導転移温度(Tc)が約4Kであったため,より高いTcを実現することを目的として真空中アニール効果の検証を行った.その結果,400℃以下の低温アニールでTcが5K以上の高い超伝導特性が発現することがわかった.また,結晶構造の解析から,低温アニールによりc軸方向の結晶構造が変化している可能性を見出した.今後,銅酸化物系で用いられたクロスジャンクション法を用いて固有ジョセフソン素子の試作に挑戦する計画である. また,本年度の研究において,超強磁場(物性研・国際超強磁場施設の共同利用)をもちいた超伝導異方性の評価も行った.BiS2系超伝導体の中で最もTcの高いLaO0.5F0.5BiS2は,常圧相と高圧相の二つの結晶構造が存在し,それぞれTc~2.5KとTc~10Kである.超強磁場下における磁気抵抗測定の結果から,高圧相の面間方向の超伝導異方性が常圧相と比べて小さいことが解明された.また,高圧相では面内にも異方性が観測され,結晶構造の対称性が正方晶から下がっており,超伝導面内で異方的な超伝導状態が発現していることを示唆した. さらに,本研究の対象物質であるBiS2系に関して,元素置換を系統的に施した系において,超伝導特性と強く相関する結晶構造パラメータの解明に成功しつつある.今後,Tcを支配するパラメータを決定できれば,より高いTcを持ったBiS2系超伝導体が得られ,応用の可能性を大きく広げることができる.また,本年度の研究で得られた単結晶を用いて,外部研究機関との共同研究を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究において,当初目的としていたBiS2系超伝導体の単結晶を得ることに成功した.また,基礎物性評価として,超伝導転移温度が上昇する条件を解明し,さらに,超伝導性が消失する限界のアニール温度も見極めた.これは,今後の固有ジョセフソン素子作製に向けて重要である.また,本年度の研究では,固有ジョセフソン素子作製に有用な情報である超伝導異方性の物質依存性を探ることを目的としており,その中で,LaO1-xFxBiS2系の超伝導異方性を詳細に議論することができた.また,NdO1-xFxBiS2系の超伝導異方性も研究中であり,今後,両者を比較することで,固有ジョセフソン素子として最適な結晶組成が見出されると考えている. さらに,本研究の対象物質であるBiS2系に関して,元素置換を系統的に施した系において結晶構造と超伝導特性を詳細に研究した結果,超伝導性と強く相関する結晶構造パラメータを見出すことにも成功した.Tcを支配する結晶構造パラメータを解明できれば,本研究目標達成のために重要となる,より高いTcを持ったBiS2系超伝導体単結晶を得られる可能性がある. 以上の理由から,申請時の初年度計画と比較して,おおむね順調に進行していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度の研究においては,第一に,H26年度の研究で得られた“低温アニール効果”の原因を解明することを目指す.具体的には,放射光を用いたX線回折などを用いて結晶構造解析を行うことで,低温アニールによりどの結晶構造パラメータが最適化されているかを解明する. 第二に,得られたBiS2系超伝導体単結晶を用い,クロスジャンクション法を用いた固有ジョセフソン素子の作製に挑戦する.スコッチテープ法により薄膜化した単結晶を2枚重ね,これまでに得られている最適アニール条件(最適な温度領域)でのアニール接合を目指す.これにより二枚のBiS2系単結晶が接合された場合,固有ジョセフソン特性を示す可能性が高いため,極低温下での電流‐電圧特性の評価を行う. また,これらの研究と並行して,BiS2系の超伝導異方性と結晶構造,結晶組成との相関を解明する研究も推進する.
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Causes of Carryover |
H26年度は研究費をほぼ使用したが,端数として43円が残ってしまったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度の研究費用と合わせて,主に消耗品を購入する予定である.
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Research Products
(22 results)