2014 Fiscal Year Research-status Report
高品質ダイヤモンドにおける負性電子親和力表面の液中再生プロセスの開発とその応用
Project/Area Number |
26600085
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 利道 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00183004)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | CVDダイヤモンド / マイクロ波プラズマ / 負性電子親和力 / 多結晶ダイヤモンド / 超音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
《走査型電子顕微鏡(SEM)による負性電子親和力(NEA)状態の評価》ダイヤモンドを高品質化することにより伝導帯の励起電子が長寿命化するため、高品質ダイヤモンドのNEA表面では固体外へ電子が放出される際の電位障壁がないので、SEM像の信号源である固体外へ放出された2次電子量の分布は、表面からバルク深部までに亘るバンドギャップ中の欠陥密度分布が強く反映される。本研究ではこの現象を利用して、水素終端NEAダイヤモンド表面に対して観測されるSEM像から試料の品質の2次元分布を調べることができるとともに、試料表面のNEA状態に関する知見も得られる。そこで本年度は、(001)面や(111)面等のダイヤモンド自形面が現れるSi(001)基板上の多結晶薄膜をマイクロ波プラズマCVD法で成長させ、各結晶面の結晶品質とその表面のNEA状態との相関について、主として定性的な解析を行った。 《液体中における超音波処理効果》液体中に超音波を入射すると、キャビテーション効果により局所的に非常に高い圧力が生じること等が知られているが、必ずしも定量的で普遍的な理解が得られている訳ではないため、新規購入した液中圧力(衝撃波)センサーにより超音波印加下の液中圧力の時間変化の液中位置依存性を調べた。 これまでの研究実績は以下の通りである。MWPCVD法により、Si上にNEA表面の多結晶ダイヤモンドを作製し、SEM観察により評価したところ、自形面のうち(001)面から2次電子が最も多く放出され、高品質であると判断された。次に、溶液処理やオゾン処理等により、一旦正の電子親和力(PEA)状態に変ったことをSEM観察により確認した後、液中で超音波処理を適切に行うと、2次電子放出量が局所的に変化することを見出した。また、超音波洗処理中に発生した圧力の詳細な時間変化は使用機器の性能に大きく依存していることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衝撃波センサーの購入により、液中での圧力の時間変化が調べられるようになったため、液中処理のより詳しい状況を把握するする上で、重要な情報が得られるようになった。具体的には、衝撃センサーで得られた「超音波処理における液中圧力の大きさや時間変化」と、SEM像観察により得られた「多結晶ダイヤモンド表面状態の超音波処理による変化」との相関について、これまで不明であった重要な情報が得られた。 しかし、それらの情報についての定量性については、本年度の段階では、SEM像観察における異なる試料間での共通の物差しに関して未確定の要素があったため必ずしも十分ではなかった。 今後の研究において、当該情報について問題となったSEM像観察における定量性を高める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「制御性の高い、常圧環境下処理による、NEA状態再生プロセスの開発」については、SEM像観察における定量性を高めるとともに、平成26年度に得られた研究実績に対して更なる検討を加えることにより、当該プロセスを平成27年度に一層発展させ、有力な当該プロセスに関する知見を得る。特に、液中の超音波処理における印加圧力の時間変化がダイヤモンド試料の表面電子親和力の変化に及ぼす影響について、単結晶基板上にホモエピタキシャル成長した試料を用いることにより、そのオフ角依存性を含め、詳細に調べる。 「ダイヤモンドからの低エネルギー電子の大気中における取出し」については、まず、MWPCVD法により作製したSi上の多結晶ダイヤモンド薄膜やオフ角単結晶上にホモエピタキシャル成長したダイヤモンド薄膜からの電子放出状態を調べた後、深紫外レーザー光励起(波長220 nmパルス光)または紫外ランプ光(連続光)照射等により、試料表面からの大気中での電子放出特性も調べ、当該液中処理プロセスに対する依存性について知見を得る。 また、2年間の本科学研究費助成事業で得られた研究成果のうち、特許化できるものがあれば特許申請手続きを優先的に行った後、当該研究成果を学会発表や論文誌への論文発表等により、公表する。
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Causes of Carryover |
新たに見出された実験事実に基づいて、本研究の成果がより期待できると思われる性能を有する超音波発生器を購入する必要が生じたため、計画していた旅費や分析費としての使用を取りやめても、当該機器を購入するには不足する状況であった。また、当該機器の仕様を詰めるための研究期間も必要となった。そこで、平成27年度に予算を繰越すとともに、当該機器の仕様を決定するための実験を早期に行うことにより、繰越分と平成27年度の予算と併せて、当該機器を可能な限り早期に購入する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度への繰越分と平成27年度の予算と併せて、上記に記載の新たな性能を有する(従来機器より1桁以上高い周波数の超音波を発生できる)超音波発生器を購入する予定である。 また、平成27年度にも、当初の計画通り、物品費(消耗品)やその他(外注分析費やダイヤモンド試料の研磨料等)費目での使用が必要であり、可能ならば旅費にも使用予定である。
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