2014 Fiscal Year Research-status Report
窒化シリコンメンブレンを用いた力検出器による液中原子間力顕微鏡の飛躍的性能向上
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26600095
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福間 剛士 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (90452094)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 力検出器 / 窒化シリコンメンブレン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、窒化シリコン(Si3N4)メンブレンを用いた力検出器を開発することで、液中原子間力顕微鏡(AFM)の力感度を向上させる。本年度は以下の研究課題に取り組んだ。電子顕微鏡観察用に市販されているメンブレンの中から、本研究の目的に合うものを選定した。選定したメンブレンには、大きさ10 mm角、厚さ200 umのSiフレームの中央部に3 mm角のウィンドウ部が備えられており、フレーム部・ウィンドウ部を含む全面にわたって厚さ500 nmのメンブレンが形成されている。 次に、ウィンドウ部に形成されたメンブレンに穴を形成するための条件を最適化し、FIBにより50 um角の穴を形成する方法を確立した。メンブレンと試料表面の間に微小空間を形成しつつ、メンブレンを試料ホルダへと固定するために、メンブレンの両サイドに厚さ500 nm程度の金薄膜を形成し、その面を試料表面に押し付けるようにして固定する方法を考案し、それ専用の試料ホルダも作製した。これを用いて、水をメンブレン下に封入したが、穴からの水の蒸発により水が保持されないことが分かった。この対策として、フレーム側面の開口部が接するように水たまりを形成した。これにより、蒸発の問題は解決したが、水が多く侵入しすぎて、メンブレンが30-50 um程度押し上げられ、市販のAFM探針の長さ(10 um前後)では、穴を通して試料に到達することが不可能になった。この問題を、長さ100-200 um程度のガラスプローブをカンチレバーに接着し、その先端に電子線堆積カーボン探針を形成することで解決し、液中でマイカ表面を原子分解能観察することに成功した。この成果は、今回提案した力検出器を用いた液中AFMの安定化、高感度化に向けた大きな進展と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究進捗状況としては、おおむね計画通りに進展していると考えている。本年度は、新型力検出器を開発し、それによる力感度の向上を確認することを目標としていた。上述の通り、水の侵入によるメンブレンの押し上げによる問題が、想定した以上に深刻で、ガラスプローブの作製や電子線堆積探針の形成など、解決すべき課題が大きく膨れ上がってしまったが、それにもかかわらず、液中での原子分解能観察を実現するに至った点は、計画よりも、さらに進んだ部分まで達成できたと言える。一方で、力感度の向上については、ガラスプローブを伝って水がメンブレン上に浸出する問題により、まだ未達成となっている。ただし、水の浸出については、いくつかの解決策の見通しがあることもあり、それほど深刻には考えていない。また、平成27年度に予定されている内容を妨げるものでもない。そのため、総合的に考えれば、おおむね予定した通りに進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の予定通り、シールド付力検出器の改善に関する装置開発と、これまで開発してきた検出器を用いた気体発生環境下での観察に向けた応用研究に、並行して取り組む。装置開発については、ガラスプローブを伝って水がメンブレンの上に浸出してくる問題を解決することが最も重要な課題である。これについては、ガラスプローブの一部を疎水化する、もしくは、プロ―ブの長さをさらに延長するなどの方法により、解決を試みる。また、メンブレンの再利用方法についても検討していく必要がある。メンブレンは高価であり、FIB加工などの手間もかかる。当初の予定とは異なり、メンブレンを現在よりもかなり厚くしても構わない状況でもあるので、電子顕微鏡用のメンブレンに限らず、いくつかの方法を検討していく。一方で、応用研究については、まず、金基板などの比較的安定な基板を用いて、電気化学ポテンシャルを制御し、水の電気分解反応を起こして、水の発生過程をナノレベルで可視化することを目標とする。これに成功した場合、二酸化チタン微粒子表面で生じる光触媒反応過程を観察し、その間に生成されるガス分子が表面でナノバブルを形成するかどうかを直接検証する。
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