2014 Fiscal Year Research-status Report
電圧印加非接触原子間力顕微鏡/分光法による水素結合の原子分解能解析
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26600098
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
新井 豊子 金沢大学, 数物科学系, 教授 (20250235)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 走査型プローブ顕微鏡 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素結合は、水のクラスター化や生体分子などの物質の相互作用で重要な働きをしている。水素結合(X-H…A)には、さまざまなプロトンドナー(X-H)とプロトンアクセプター(A)との間の、静電力、分極、電荷移動、分散力などが関係している。本研究では、水素結合のアクセプターおよびドナーを平面基板上および探針先端に形成して水素結合を原子レベルで調べることを目的としている。 原子的平滑さを持つ平面基板としてSi(111)7x7再構成表面を用いた。Si(111)7x7再構成表面調製後、Si基板を約300℃に加熱し、原子状水素を暴露して、Si(111)7x7のアドアトムおよびレストアトムの一部が水素で終端されたH/Si(111)7x7試料を作製した。また、室温でSi(111)7x7再構成表面にアンモニアガスを少量暴露するとNH2基とHが、アドアトムとレストアトムに解離吸着する。作製した試料は、Si(111)7x7表面の一部のアドアトム上に同数程度のNH2基とHが吸着した。探針は超高真空中で加熱清浄化したSiを用いた。 Siの電気陰性度は1.8で、Hの2.1よりも小さいため、Si-H…Siの様な水素結合は起こらないと考えられる。しかし、H/Si(111)とSi探針間でSi-Siよりも弱い近距離引力を検出した。これは、一種の水素結合と考えられる。NH2/Si(111)とSi探針間では、さらに弱い近距離引力を検出した。これらの近距離力の距離依存性から、どの相互作用(静電力、分極、電荷移動、分散力)が最も寄与しているかを明らかにし、そのメカニズムを解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、探針先端にHN2基を形成し、[-N:…H-N-]の水素結合を計測する予定であったが、結合方向にNのローンペアとN-Hを対向させることが困難であった。我々の従来研究から、[001]方位を向いたSi探針先端には、Siダイマーがあり、探針との間のバイアス電圧を制御して、ダイマーをバックリングさせれば、最先端Siはs-likeな電子状態すなわちローンペアと同様な電子状態を取ると考え、[-Si:…H-N-]水素結合を解析した。さらに、[-Si:…H-Si-]でも水素結合を示すことが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
上記H26年度の成果について、現在論文準備中である。実験としては、当初計画通り水中の水素結合について解析する。
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