2014 Fiscal Year Research-status Report
自己検出型周波数変調方式原子間力顕微鏡による氷表面の分子分解能測定と物性計測
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26600099
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阿部 真之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00362666)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 自己検出型 / 氷表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
氷結晶成長環境(0℃以下)の原子間力顕微鏡(AFM)を用いたナノメートルオーダー観察は、熱の影響が大きい光学系を用いた市販のAFMが用いられてきたため困難であった。この問題点を解決し、氷表面を分子分解能で測定するためには、探針の変位検出を、光学的手法を用いない自己検出型のAFMの開発を今年に行った。従来、自己検出型のAFMセンサとして水晶振動子が用いられているが、幾何学形状が異なる2つの種類が存在している(音叉型と縦振動型)。これまで、どちらも真空中で原子分解能測定が行われているが、空気中での違いを確認する実験を行った。具体的には、センサの熱振動と計測アンプのバックグラウンドノイズの関係をスペクトラムアナライザで測定した。そのための専用の治具を開発した。その結果、縦型振動センサの方が、信号雑音比が大きいことがわかり、縦型振動型のセンサでAFM実験を行うための整備を行った。専用のAFMヘッド(本体)を自作した。さらに、回路系やステージの粗動確認用の光学系など、室温でのAFM用標準試料(NaClやCaCO3などを)を用いた予備実験に必要な準備がほぼそろった。また、探針をセンサに探針をとりつけるための装置を整備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験装置の整備はほぼ完了し、実験を行える状況であるが、センサ先端にAFM探針を実現することに非常に時間がかかり、NaClやKBrなど、氷表面以外の表面で行う予定であった予備実験を行うことができなかった。具体的には、縦型水晶振動子にAFM探針を取り付けるときにセンサが壊れやすいことや、探針を取り付けるときに必要な接着剤による質量の増加の影響で振動をしなくなることがあった。探針今後は研究室内で所有するSEM/FIB装置を用いてセンサ先端に探針を成長させ、不要なセンサ部分の質量増加による影響を少なくする方法を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
年度の前半において、室温でのAFM用標準試料(NaClやCaCO3などを)を用いた予備実験を行う。標準試料での原子分解能測定を達成後、低温インキュベーターを導入し、温度が制御された環境で氷表面の原子分解能観察を行う。課題としては、ゼロ度付近での装置の結露が考えられる。電極部分をエポキシなどで保護する、乾燥窒素を導入する、通常の水(H2O)よりも融点が高い重水素(D2O、融点3.8℃)を測定試料とする、などの対策を行い、結露の影響を少なくすることを試みる。原子分解能像観察条件を見出し、フォーススペクトロスコピーやフォースマッピングなどの応用測定を行う。
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Causes of Carryover |
センサ先端にAFM探針を実現することに非常に時間がかかり、これに注力するために、すべての予算を使用することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
AFM探針の取り付け方法を確立することができれば、標準試料を用いる測定を行う予定であるが、その試料購入に予算を使用する予定である。もしくは、ゼロ度付近の温度を保つことができる恒温槽の購入費の一部に使用する。
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